- 2020-12-17
- 特集
ニュースで「円高ドル安」などの言葉を耳にしたことがあると思います。
しかし、その本質を知らずに投資されてる方は多いのではないでしょうか?
これまではただトレンドにつくだけで、その背景はわからないことが多かった方でも、為替と日本株の関係性を知るだけで収益に大きな差が出ています。
また現在、米中貿易摩擦により円高が進んでいます。
そこで今回は円高の基本から、日本株の変動や円について解説していきます。
目次
1.円高とは?
簡単に言うと、他国の通貨より円の価値が上がったことを意味します。 円に対する各国通貨の価値は経済情勢に応じて常に変動しています。
1ドル=100円を基準とした場合、
・円の金額が1ドル=90円になると円高 ・円の金額が1ドル=110円になると円安
例えば、1ドルを買うのに100円必要だったのが、円高によって90円だけで1ドルが買えるようになる。
そうすると、同じモノが以前より少ない円で買える。この「円の価値があがった」という現象が円高です。
円高や円安となる理由は、買われた通貨が高くなったり、売られた通貨が安くなるという仕組みが存在するからです。
つまり、円高となる理由は「円が買われたから」と言えます。 なぜ円が買われたのかについては、次のことが考えられます。
- 日本の金利が上がる
- 日本株が落ち込む
- アメリカの金利が下がる
- アメリカの景気が落ち込む
- 日米の重要人物の発言によって
日本は海外との輸出入に大きく頼っており、とくにアメリカ経済の影響を受けやすい国ですので、円高・円安によって経済の流れは左右されます。
テレビやインターネット等のニュースで「為替」について多く取り上げられるのは、それほど重要なことだからです。 為替の変動によってどのような影響があるのか見ていきましょう。
- 円高とは円の価値が上がること
- 為替と輸出入の関係は密接である
- 円高・円安によって景気が左右される
2.円高が経済に与える影響
基本的に円高は輸出企業には不利となりますが、輸入企業にとっては有利に働きます。
日本はもともと製造業を中心とし、国内で生産して海外に輸出することで経済を発展させてきた国ですので、円高は不景気となる傾向にあります。
一方で資源の少ない日本は、多くの資源を海外からの輸入に頼っている側面もあり、円高によって原材料を安く仕入れやすくなります。
円高のメリットとデメリット、それぞれの理由を解説していきます。
2-1 円高のメリット
真っ先に思い浮かぶのが「旅行」でしょうか。
投資家以外の人たちにとっても、海外旅行に安く行けるという点は魅力的です。
それ以外に国内でも輸入品が安く買えます。 例えば高級腕時計や外国車など、円高になると「円高還元セール」をよく目にするはずです。
また、原油の仕入れコストにも影響します。
日本は世界第3位の原油消費国ですから、原油価格が下がることで企業は生産コストを抑えることができ、日常生活ではガソリンや灯油なども安くなります。
海外から資源や資材等を仕入れる輸入業にとってコストが安く済むことで収益アップに繋がり、さらに生産の幅を広げるために海外の土地や企業の買収もしやすくなります。
主に製造業や製紙業の内需型(国内消費)企業は業績アップが見込めることで、関連銘柄は円高によって買われやすくなります。
具体的にどの銘柄が恩恵を受けやすいのかも後ほど書いていきます。
2-2 円高のデメリット
円高になると輸出企業の業績には悪影響をもたらします。
円の価値が上がるということは、日本の商品が海外で高くなってモノが売れにくくなります。
商品価格が高くなることで競争力が低下し、輸出での売り上げが減少した企業はコスト削減のため、働いてる人の給料削減を迫られます。
その結果、物価の下落要因となることから不景気に繋がり、デフレへの影響が心配され、日本株は売られやすくなるのです。
このような流れで円高によって不況を招くことを「円高不況」と言います。
例えば海外に自動車を輸出しているトヨタ自動車は、為替に1円の変動があるだけで業績に350億円の違いが出ると言われるほどです。
また、海外からの旅行者は減少に繋がるため、日本の観光地にとっては深刻な問題となります。
このように、為替の変動は日本経済全体で考えるととてつもなく大きなインパクトがあるとお分かり頂けるのではないでしょうか。
2-3 コロナ相場での為替市場について
2020年の為替相場は、コロナショックが起こった2020年2月から3月の1ヶ月の間に、1ドル111円台から103円台となり再び111円台となる大乱高下となりました。
ただコロナショック以降、世界の株式市場が回復に転じてからは、ジワジワと円高基調になっています。
6月には一時円安となったものの、その後は円高トレンドに戻りました。
2020年12月時点では1ドル103~104円で落ち着いています。
為替相場のボラティリティーは小さくなっており、大きな値上がりが目立つ株式市場や仮想通貨とは対照的ですね。
なお円ユーロ相場はほぼ横ばいとなっており、円高というよりはドル安が進行していると言った方が適切です。
ドル安円高が進む背景
これはアメリカのFRBがゼロ金利政策を続けていることがあります。
FRBは少なくとも2023年末まではゼロ金利を続ける方針を示しているため、ドル安円高トレンドは2~3年は続く可能性が大きいと見られます。
またアメリカ大統領選で当選確実としているバイデン氏は、積極的な財政出動を掲げており、ドル安円高トレンドに追い風となりそうです。
2020年12月時点で、日経平均株価はバブル期以来の水準となるなど好調ですが、円高がマイナス要因として認識される展開も認識しておき、円高メリット関連銘柄に資金を逃避させる戦略を考えおくことも悪くありません。
- 円高は輸入企業には有利、輸出企業には不利
- 円高になると個人も企業も海外に行きやすい
- 円高は日本の不景気を招く要因となる
3.円高ニュースと関連銘柄の動き
激化する一方の米中貿易摩擦や、米国連邦制度準備理事会(FRB)の10年ぶりの利下げ決定などを受けて、円高が止まりません。
多くの輸出企業はドル円相場の為替レートを110円前後と想定していることから、今後、円高が企業業績にも大きな影響を及ぼし、株価が一段安となることも懸念されます。
既に円高で大きな影響を受けている企業も出てきています。
インドを始めとする海外売上比率が高い軽自動車大手のスズキは、為替差損が69億円になったと発表。
この発表を受けて、株価は1日で-9%近い大きな下落となっています。
輸出系企業にとって円高は苦しい局面となりますが、海外から原材料を輸入している企業や、M&Aを行う企業にとっては、この円高は絶好のチャンスになるかもしれません。
米中貿易摩擦は、21世紀の覇権を争うアメリカと中国の構造的な問題であるため長期化することは間違いありません。
トランプ大統領はさらなる利下げを求めているなど、今後も円高傾向は続くものと見られます。
投資家にとって円高は難しい局面となりますが、円高を享受して好業績となることが期待される円高メリット関連銘柄に資金を逃避させておくことを検討してもよいかもしれません。
3-1.新型コロナでも業績好調!【9843】ニトリホールディングス
格安家具大手の【9843】ニトリホールディングスは、新型コロナ下でも業績好調の円高メリット関連銘柄です。
同社は海外工場で家具を生産して輸入していることから、代表的な円高メリット関連銘柄に位置付けられます。
また同社の似鳥昭雄会長は為替相場を読む達人としても有名であり、ニトリがここまで成長したのも似鳥昭雄会長の相場観が大きく寄与していることで知られています。
同社の株価は、2020年初めには17,015円を付けており、コロナショックでは3月13日に12,725円まで下落。
その後はドル安円高トレンドに合わせるように上昇し、8月4日には23,455円まで上昇しました。
コロナショックからは最大+84%の上昇率となっており、8月以降は高値圏で横ばいとなっています。
特に重要なことは、同社は新型コロナ下でも業績が絶好調であることです。
2020年10月の中間決算では、巣ごもり需要が大きく寄与したことにより過去最高の利益となりました。
3-2.円高メリット×ホームセンター株!【7516】コーナン商事
ホームセンター「コーナン」を展開する【7516】コーナン商事は、円高によって値入率が改善する円高メリット関連銘柄として知られています。
同社の株価は、2020年1月初めには2,529円を付けており、3月17日にはコロナショックで1,792円まで下落。
その後の新型コロナ相場ではホームセンター株の代表格として買われ、8月25日には4,270円まで上昇しました。
2020年の最大上昇率は+138%となっています。
2020年に大きく上昇した円高メリット関連銘柄を見てきましたが、円高メリットを受けられるとはいっても、旅行株や電力株は大きく下落しています。
ニトリやコーナン商事のように成長していなければ、いくら円高メリット関連銘柄であっても、円高局面で買われることはありません。
4.円高メリット関連銘柄リスト
銘柄 | 備考 |
【2002】日清製粉グループ本社 | 製粉メーカー |
【2282】日本ハム | 食肉総合メーカー |
【3861】王子HD | 製紙メーカー |
【3941】レンゴー | 段ボールメーカー |
【9201】JAL | 航空会社 |
【9202】ANA | 航空会社 |
【9501】東電HD | 電力会社 |
【9531】東京ガス | 都市ガス大手 |
【9603】エイチ・アイ・エス | 旅行会社 |
【9843】ニトリHD | 輸入家具販売 |
5.おすすめの円高メリット関連銘柄
5-1.【2282】日本ハム
市場 | 東証1部 |
注目ポイント | 食肉総合メーカー。ハムやソーセージに強い |
日本ハムは食肉の飼育から加工、販売まで一貫して手掛けており、円高になると飼料コストを安く抑えることができる円高メリット関連銘柄に数えられます。
日本ハムに限らず、食品メーカーは円高メリットを受けることができる銘柄が多く、
2019年10月の消費税増税時にも食料品には軽減税率が適用されることから消費税関連銘柄としても注目のセクターです。
5-2.【3941】レンゴー
市場 | 東証一部 |
注目ポイント | 段ボールメーカー最大手 |
レンゴーは、ダンボール専業の製紙メーカーです。
縮小が続く製紙業界ですが、ネットショッピングによる通販市場の急激な拡大により、ダンボールだけは例外で急成長を遂げています。
製紙セクターは原材料価格の下落による円高メリットを受けることができますが、特に成長セクターのダンボール専業メーカーである同社には注目です。
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5-3.【9202】ANA
市場 | 東証1部 |
注目ポイント | 日本最大の航空会社。 |
円高による航空燃料コストの下落と、海外旅行費が下がることによる海外旅行者の増加という2点において、円高の恩恵を受けると考えられます。
円高局面においては、【9201】JALとともに抑えておきましょう。
6.まとめ
日本市場においては外国人投資家の割合が圧倒的に占めている以上、その関係から「円高・株安」の構図はそう簡単に崩れそうもありません。
円高時にどのような投資戦略を練るか?
この判断で投資の成果は大きく左右されます。
2019年の米中貿易摩擦、FRBの利上げなど海外のニュースも円高につながりますので、最新ニュースにも注目しておく必要があるでしょう。
デメリットが多いとも言われる円高ですが、海外からの輸入に頼っている日本にとって適度な円高も歓迎すべきです。
投資判断の精度を上げるためにも、円高時にはこれらのメリットを存分に活かしていきましょう。
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