- 2020-2-6
- 電子化
日本銀行の「決済動向」によると、2017年の電子マネーによる決済金額は5兆2,000億円程度となっているそうです。
今や交通機関やコンビニエンスストア、ファミレスなどで当然のように電子マネー決済が可能となりました。
電子マネーの最大のメリットは、現金支払いに比べ支払が簡単に済ませられる点です。
今後こうした流れは更に加速することが想定され、益々キャッシュレス社会へと進んでいくでしょう。
今回は電子マネー普及に伴い恩恵を享受する企業を「電子マネー」関連銘柄として、株価動向やその背景について分かり易くご紹介したいと思います。
目次
1.「電子マネー」関連銘柄に期待
「電子マネー」関連銘柄とは、電子マネー普及によって恩恵を受ける企業を指します。
1-1.「電子マネー」関連銘柄とは?
電子マネーには、SuicaやPASMOなどの交通機関が発行するものや、nanacoやwaonといった流通各社が発行しているものまで様々な企業が参画しています。
複数の電子マネーを使い分けている、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その大きなメリットが、支払い時の簡便さです。
小銭を財布から出す必要が無く、一瞬で会計が終了するのは時間効率の観点でとても有用です。
また、利用する度にポイントが貯まる電子マネーもあります。
普段の買い物をするだけでポイントが自動的に貯まっていくわけですから、消費者にとってはこちらも大きなメリットと言えるでしょう。
2018年6月15日に政府が発表した「未来投資戦略2018」では、今後10年間でキャッシュレス決済比率を現状の21.0%から40%程度への引き上げを目標として掲げられています。
今後益々電子マネーへの需要は拡大することが見込まれまれ、こうした動きに伴い恩恵を享受する企業が存在します。
今後の電子マネーの需要拡大を背景に業績拡大が期待出来る企業を、「電子マネー」関連銘柄としてご紹介していきたいと思います。
1-2.急速に広まる電子マネー
2019年10月の消費税増税と同時に始まった「キャッシュレス還元」の影響で、電子マネーを中心としたキャッシュレス決済が急速に広がっています。
2019年10月から12月2日までのキャッシュレス還元額は約900億円と、政府の想定以上のスピードで還元が行われているようです。
キャッシュレス還元にあてる当初予算は2,798億円でしたが、2019年12月の補正予算で1,497億円分の追加予算があてられることになりました。
キャッシュレス還元は2020年6月末までとなっており、電子マネーを中心としたキャッシュレス決済はさらなる広がりを見せそうです。
また、QRコード決済「PayPay」を手掛けるZホールディングスが「LINE Pay」を手掛けるLINEの買収を発表し、「メルペイ」を手掛けるメルカリが「Origami Pay」のOrigamiを買収するなど、キャッシュレス決済を巡る再編も活発化しています。
1-3.なぜ「電子マネー」関連銘柄は株価が上昇するのか?
「電子マネー」関連銘柄が株式市場で注目されている理由は、主に2パターンあります。
電子マネーを発行している企業
1つは、SuicaやPASMO、nanacoやWAONといった電子マネーを発行している企業の場合です。
電子マネーへの需要拡大に伴い、利用可能店舗が増加することが予想されます。
発行企業の収入源は、これら利用可能店舗から得る加盟店手数料です。
店舗側は広く流通している電子マネーを利用出来るようにすることで、決済の利便性を背景に誘客することができ、加盟店手数料はそれへの対価ということになります。
そのため利用可能店舗が増加すれば、発行企業にとっては収入増加を意味しているのです。
加盟店
加盟店側の場合は電子マネーを導入する大きなメリットは誘客効果です。
消費者にとっては決済が簡単かつポイントが貯まる電子マネーが使用できる店舗とそうでない店舗とでは前者の方が圧倒的に便利です。
つまり、電子マネーの利用可否が消費者にとって来店動機を決定づけているのです。
そしてもう1つのメリットが、電子マネーを利用した消費者に関する販売データなどが取得出来る点です。
もちろん個人情報と紐づいた情報ではありませんが、
どこから来て、年齢はどのくらいで、何を買っているのか、といった大枠の販売分析を行うことが可能となります。
顧客データを活用することで、精度の高い在庫量や品揃えを実現することができ、店舗収益の改善につながるのです。
株式市場ではこうした2パターンの成長シナリオを織り込み、「電子マネー」関連銘柄への注目度が高まると言えるでしょう。
その結果、「電子マネー」関連銘柄の株価が上昇するのです。
- 「電子マネー」関連銘柄とは、電子マネーの需要拡大によって恩恵を享受する企業のことを指します。
- 電子マネー関連銘柄には発行企業と加盟店との2パターンがある
2.電子マネー関連銘柄の上昇した銘柄とその理由
キャッシュレス還元が始まった2019年10月以降に上がった電子マネー関連銘柄を抑えておきましょう。
2-1.電子マネー発行システムを手掛ける!【3960】バリューデザイン
自社ブランドで発行可能なハウス電子マネー(プリペイドカード)発行システムを提供している【3960】バリューデザインは、キャッシュレス還元後に大きく買われている電子マネー関連銘柄です。
同社が提供するバリューカードASPサービス「valuedesign」は日本国内で最多の導入実績となっており、ステーキ専門店「いきなりステーキ」の肉マイレージカードなどが代表的です。
同社の株価は、2019年10月初めには1,753円を付けていましたが、キャッシュレス還元の始まりとともに上昇しており、2020年2月には2,538円まで上昇。
キャッシュレス還元が始まってから4ヶ月で最大+44%の上昇となっています。
2-2.モバイル決済システムを手掛ける!【3741】セック
リアルタイム技術に定評があるシステム開発会社の【3741】セックは、モバイル決済システムの開発を手掛けていることから電子マネー関連銘柄の一角に数えられます。
同社はスマートフォンやタブレット、モバイル決済端末など多様なモバイル機器の組み込みソフトウェアの開発を手掛けており、非接触ICカードチッププロトコルの設計実績もあります。
同社の株価は2019年10月初めには2,995円を付けていましたがその後上昇。
2020年1月には4,180円にまで上昇しました。
キャッシュレス還元が始まってから3ヶ月で最大+39%の上昇となっています。
- 電子マネーの利用可能店舗拡大による恩恵が想定される企業は評価されやすい
- 電子マネー導入による販売効率化が想定される企業は評価されやすい
3.「電子マネー決済」関連銘柄
銘柄 | 備考 |
【8028】ユニー・ファミリーマートHD | ファミマを存続会社としてユニーGHDを吸収合併。コンビニ事業とGMS事業を展開。コンビニ店舗数ではセブンに匹敵する規模。 |
【7532】ドンキホーテHD | 中核は総合ディスカウントストア「ドン・キホーテ」。PB強化。HCドイト、GMS長崎屋もリテール事業会社。 |
【8217】オークワ | 近畿・東海エリアで食品スーパーやディスカウントストアなどを展開。ネットスーパーやセルフレジも導入。 |
【2681】ゲオHD | レンタルやゲーム買取販売、衣料・服飾や家具・家電の買取販売の総合リユースを事業を運営。オリジナル電子マネーを導入。 |
【8167】リテールパートナーズ | 中四国・九州地盤の食品スーパー。2018年5月に電子マネーを導入。 |
【9846】天満屋ストア | GMS「天満屋ハピータウン」と食品スーパー「ハピーズ」を中心に、中国地方で展開。セブン&アイHDと提携しnanacoを導入。 |
【8267】イオン | GMS、スーパー、小型店を展開する総合小売企業。電子マネーWAONをグループ内外に展開。 |
【9993】ヤマザワ | 山形、宮城で食品スーパーを展開。子会社「ヤマザワ薬品」ではドラッグストア、調剤薬局も経営。独自の電子マネーを導入。 |
【7649】スギホールディングス | 調剤併設型ドラッグストア「スギ薬局」を運営する持株会社。電子マネー決済対応を店舗に展開。 |
4.おすすめ「電子マネー」関連銘柄3選
4-1.【4755】楽天
市場 | 東証一部 |
注目ポイント | ネット通販大手「楽天市場」を展開。金融や携帯電話事業も。 |
電子マネー「楽天Edy」の発行枚数は1億2,000万枚を超えており、日本で最も発行されている電子マネーとなっています。
今後、電子マネー関連銘柄はキャッシュレス還元終了に伴って売られることも懸念されます。
キャッシュレス還元終了後にも使われ続ける電子マネーを手掛けている銘柄がおすすめです。
4-2.【9020】JR東日本
市場 | 東証一部 |
注目ポイント | 日本最大の鉄道会社。電子マネー「Suica」も展開。 |
電子マネー「Suica」の発行枚数は2019年時点で7,600万枚以上となっています。
発行枚数では「楽天Edy」より少ないものの、利用頻度においては日本で最も広く使われている電子マネーと言ってよいでしょう。
キャッシュレス還元とともにSuicaの鉄道利用によるポイント還元も解禁されたことから、今後も最強電子マネーの座が揺らぐことはなさそうです。
4-2.【3382】セブン&アイ・ホールディングス
市場 | 東証一部 |
注目ポイント | 「セブンイレブン」を軸とする総合小売業大手。電子マネー「nanaco」も手掛ける。 |
セブン&アイ・ホールディングスの電子マネー「nanaco」は、セブンイレブンやイトーヨーカ堂を始め、さまざまな場面で使うことができ、発行枚数は6,500万枚を超えています。
同じく総合小売業が発行している代表的な電子マネーとしては【8267】イオンが発行する「WAON」にも注目です。
5.まとめ
もはや生活に浸透している電子マネー。
政府の後押しもあり、レジを通過せずに決済する方法など、キャッシュレス社会は今後益々浸透していくことが想定されます。
様々な技術が現状開発され始めていますが、現状最も流通しているのが電子マネーであり、今後もその地位は変わらないでしょう。
株式投資においても、電子マネーを切り口に銘柄選別を行うと、関連企業の業績変化を契機として大きなリターンを獲得出来るかも知れません。
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