株式コラム

原油急騰、株価への影響は?いつまで続く原油高

世界の原油価格の目安となっているWTI原油先物価格が高騰しました。

最新の2018年6月3日のWTIは65.72ドルと、2014年の水準まで回復し、2016年1月の33ドルからほぼ倍増です。

 

日本国内のレギュラーガソリン価格(看板価格)も2018年6月1日にリッター147.7円を記録、1年前の2017年7月はリッター121.5円だったので2割以上高くなっています。

 

これだけ原油とガソリンが高騰すると、株価への影響が気になるところ

 

  • 原油価格が高騰している理由
  • 原油価格の今後の見通し
  • 原油高騰の株価への影響

 

今回はこの3つについて解説していきます。

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原油価格が高騰している理由

まずは直近のWTIの値動きをおさらしておきましょう。

日付 値動き
2016年1月 33.62ドル
2017年8月 47.23ドル
2017年12月 60.42ドル
2018年1月 64.73ドル
2018年2月 61.64ドル
2018年3月 64.94ドル
2018年4月 68.57ドル
2018年5月 67.04ドル
2018年6月3日 65.72ドル

2016年から急騰し始め、2017年12月には60ドル台に突入しました。

2018年に入ると上昇基調がより顕著になり、4月には70ドル台に迫る勢いでした。

 

5、6月と前月割れしていますが、それでも近年の数字からすると高値を維持しています。

これだけの急騰を招いた理由は主に2つあります。

理由1:米英仏によるシリアへの軍事攻撃と米政権のイラン核合意の離脱

今回の原油価格高騰の第一の理由は地政学リスクでしょう。

2018年4月に米英仏によるシリア攻撃と、アメリカのイラン核合意からの離脱表明という事態が、相次いで起きました。

 

ただ、シリア攻撃だけだったら、原油はこれほど高騰しなかったとみる専門家は少なくありません。

それはシリアへの攻撃が一時的かつ限定的であることが事前にわかっていたからです。

 

ロシアを巻き込んだ大きな軍事衝突に進む可能性が低く、石油市場ではむしろ「ガス抜きができた」として、売りが先行する(原油価格が下がる)場面もみられました。

ところがそこにアメリカのイラン核合意離脱表明のニュースが飛び込んできて、従前より強く警戒する動きが現れたのです。

 

緊張が緩んだ瞬間に新たな緊張が訪れたことで危機感が強まってしまったのです。

理由2:OPECの減産体制が奏功した

石油輸出国機構(OPEC)の減産体制が維持され続けています。

ベネズエラが経済危機によって原油生産を減らしているという特殊事情もありますが、その他の加盟国も協調減産の基調を維持してきました。

 

先行きの需給がひっ迫するとの見方から、買い注文が入り価格を押し上げたのです。

産油国はこの原油高を、減産の取り組みが奏功した結果とみているでしょう。

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原油価格の今後の見通し

今後の原油価格の見通しですが、これまで通りの高騰を続ける要因はほとんどありません。

むしろ、原油価格を押し下げそうな動きが見え始めています。

 

原油価格高騰が続かないとみる要因の1つは、ドル高気配です。

アメリカの5月の雇用統計が良好だったことからドル高が進行しました。

 

一般的に、原油価格とドルは反比例する関係にあるため、ドル高が進行すると原油価格は下がるのです。

 

原油は基軸通貨のドルで取り引きされるので、ドル高になると原油を買いにくい状況になり、原油在庫がだぶつくようになります。

また、アメリカのシェールオイル生産が増産の動きをみせており、これも原油価格を押し下げる効果があります。

 

一方で、原油価格が暴落する可能性も低そうです。

それは産油国のサウジアラビアとロシアが原油の減産体制を緩める方針を示し始めたからです。

 

この両国の動きにつられて原油の増産基調にのれば原油価格は下がりますが、ただそういった動きがOPECにすぐに広がるとは考えにくい状況です。

こうした動向を総合すると、原油価格が今後さらに急騰することは考えにくいのですが、急に下がることもなさそうです。

 

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原油高騰の株価への影響

それでは次に、今回の原油価格の高騰が、国内株式市場にどのような影響を与えたのかみていきます。

 

一般的に原油価格と企業の株価は次のような関係にあります。

  • 原油を大量に使う企業の株価は原油高になると下がる
  • 原油や石油製品の生産に関わる企業の株価は原油高になると上がる

 

原油を大量に使う企業にとって原油高は原材料の高騰を意味するので、生産コストが上がって収益を圧迫するため、株価は下がります。

 

一方、原油や石油製品の生産に関わる企業は、原油高になると「商品を高く売ることができる」ようになるので、業績が上向き株価は上がります。

 

ただこうした法則はあくまで「一般的」な捉え方に過ぎません。

今回の原油価格高騰でも、この法則に反する値動きをした株がありました。

原油高メリットに見舞われるとされる銘柄のチェック

原油高によって株価が上がることが多い、原油や石油製品の生産に関わる事業を行っている企業」をチェックします。

 

2018年3、4、5、6月の値動きをみてみましょう。

2018年(円、WTIのみドル) 3月 4月 前月比 5月 前月比 6月1日(WTIは6月3日) 前月比 3月比
三菱商事 2,862 3,027 5.77% 3,031 0.13% 3,046 0.49% 6.43%
住友商事 1,791 1,970 9.99% 1,828 -7.21% 1,832 0.22% 2.29%
JXHD 644 714 10.87% 703 -1.54% 708 0.71% 9.94%
国際石油開発帝石 1,316 1,403 6.61% 1,214 -13.47% 1,231 1.40% -6.46%
日本海洋掘削 2,009 1,909 -4.98% 1,748 -8.43% 1,760 0.69% -12.39%
日経平均 21,454 22,467 4.72% 22,201 -1.18% 22,171 -0.14% 3.34%
WTI 64.94 68.57 5.59% 67.04 -2.23% 65.72 -1.97% 1.20%

三菱商事住友商事JXが定石通り、原油高と比例して株価を上げました

とくにJX株は敏感に反応しています。

 

しかし、6月1日の株価と3月を比べると、住友商事株の上昇率(2.29%)は日経平均の上昇率(3.34%)を下回っていますので、原油高効果はそれほど大きくなかったことが推測されます。

 

また、国際石油開発帝石日本海洋掘削は、原油高にも関わらず株価を下げています。

ここからは、投資家たちが単にWTIだけを見ているのではなく、石油関連企業の特殊性をしっかり見据えていることがわかります。

 

特に今回の原油高騰は海洋油田に絡んだものではないので、日本海洋掘削の株価にはよい影響を与えなかったわけです。

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原油高デメリットが出るとされる銘柄のチェック

原油高によって株価が下がることが多い、原油を大量に使う企業」をチェックします。

 

2018年3、4、5、6月の値動きをみてみましょう。

2018年(円、WTIのみドル) 3月 4月 前月比 5月 前月比 6月1日(WTIは6月3日) 前月比 3月比
住友化学 620 629 1.45% 659 4.77% 656 -0.46% 5.81%
三井化学 3,355 3,140 -6.41% 3,150 0.32% 3,080 -2.22% -8.20%
ブリヂストン 4,624 4,589 -0.76% 4,365 -4.88% 4,360 -0.11% -5.71%
日本通運 7,120 8,270 16.15% 8,190 -0.97% 8,110 -0.98% 13.90%
ANA 4,118 4,340 5.39% 4,382 0.97% 4,403 0.48% 6.92%
日経平均 21,454 22,467 4.72% 22,201 -1.18% 22,171 -0.14% 3.34%
WTI 64.94 68.57 5.59% 67.04 -2.23% 65.72 -1.97% 1.20%

三井化学ブリヂストンは定石通り、原油高と反比例して株価が下降しました

6月1日の株価の3月比に注目すると、WTIは1.2%増、日経平均は3.34%増でしたが、この2銘柄はかなり大きく値を下げました。

 

一方、住友化学日本通運ANAの株価は3月→6月で値上がりしています。

しかもWTIや日経平均の上昇率より高い上昇率を示しています。

 

ここからわかることは、「住友化学と日本通運とANAは、原油高というマイナス要素を覆すだけの好業績を上げたのだろう」ということです。

つまり、原油価格が値上がりし始めても、しばらくは様子見をする投資家が少なからず存在することがわかります。

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まとめ~リスク分散が必要

今回の2018年前半の原油高騰は、大きな値動きを示した期間が短かったことや、高騰した要因がすぐに収束に向かいそうな情勢だったことから、日本株への影響は限定的でした。

 

しかし、個別銘柄に注目すると影響はゼロではありませんでした。

原油の大きな値動きは、為替の値動きと同様、株式投資にとってはチャンスにもピンチにもなります。

 

こうした荒い局面をチャンスにしたいと考える投資家は、複数銘柄を買うなどしてリスクの分散を心がけましょう

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