株式コラム

9月の自民党総裁選の行方と株価の動向

第2次安倍晋三政権が発足した2012年12月、日経平均は9,376円でした。

それから5年半後の2018年8月現在、23,000円を試す展開を見せています。

 

安倍政権とアベノミクスは、経済運営面では間違いなく成功したと評価できます。

 

ただし、「ここまでは」です。

というのも財政再建では問題先送りが目立ち、内政では森友学園問題と加計学園問題が依然としてうごめいていて、安倍政権の支持率の低下は危険水域に達しているからです。

 

2018年9月に行われる自民党総裁選では、安倍氏3選に暗雲が垂れ込めています。

6月の新潟県知事選で自民党候補が勝利したため、安倍氏に追い風が吹きましたが、あと3カ月も吹き続けるかわかりません。

 

安倍氏が総裁選に勝っても敗れても、株価への影響は小さくないでしょう。

個人投資家は政権の行方と株価の動向を「両にらみ」する目を、いまから持っておいてください。

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自民党総裁選の行方

それではまずは、9月の自民党総裁選についてみていきます。

石破、岸田、野田の3氏の動向

安倍氏以外で総裁選への出馬が取り沙汰されているのは、石破茂岸田文雄野田聖子の3氏です。

 

いずれも党三役や重要閣僚を経験していて、実力は申し分ありません。

また、河野太郎外相も国民の人気が高く、今後の政局次第で名前が挙がってくるかもしれません。

 

この4氏のなかで頭ひとつリードしているのは石破氏とみられています。

 

 

自民党の地方組織の信頼が厚く、名前が挙がっているなかでは最も「反安倍」の色合いが強いからです。

 

石破氏は内閣府特命担当大臣として安倍内閣にいましたが、2016年に大臣を退任して現在は無役です。

もし今後自民党内で「安倍おろし」の機運が高まれば、国民に最も強く「自民党は変わった」とアピールできるのは石破氏なのです。

 

岸田氏は政調会長、野田氏は現役の総務大臣、河野氏も外相と、安倍政権を支える立場にあるので、総裁選に出馬したときに「なぜ安倍おろしの先陣を切るのか」という大義を立てにくいのです。

安倍氏3選のシナリオとは

石破氏の総裁選への出馬が確定すれば、安倍陣営は結束して対抗するはずです。

というのも森友加計問題は安倍政権のアキレス腱ですが、逆に言えば森友加計問題が鎮静化すれば安倍陣営の弱点はあまりありません。

 

しかも森友加計問題は、大きな汚点ではありますが、政治家への闇献金や賄賂といったいわゆる「疑獄」ではありません。

自民党内に「国民による安倍バッシングが一区切りついた」という観測が流れれば、再び安倍氏を支持する雰囲気が醸成させるかもしれません。

 

そのため強敵石破氏が出てきても、「安倍氏盤石」という見方が順当といえます。

また、安倍氏が北朝鮮の金正恩委員長との日朝首脳会談を実現させれば「外交に強い安倍」がさらに強く認識されるはずです。

 

歴史的偉業である米朝首脳会談が6月12日に行われましたが、火種は残っています。

今後再び米朝関係が悪化すれば、日本外交はトランプ米大統領と親しい安倍氏に頼らざるを得ません。

 

北朝鮮による日本人拉致問題の解決は改憲に次ぐ安倍氏のライフワークでもあるので、その点でも「安倍頼み」は強まります。

このように自民党総裁・総理としての器や貫禄といった意味では、安倍氏は石破、岸田、野田の3氏をはるかに凌駕しているといえます。

 

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安倍氏が出馬すらできなくなる事態とは

安倍氏が総裁選に破れる可能性は高くはありません

ましてや、憲法改正と2020年東京五輪に並々ならぬ意欲を見せている安倍氏が出馬自体を取りやめることは、ほとんど考えられません。

 

しかし、ここでは「あえて」安倍氏の総裁選敗退や不出馬を考えてみます。

 

安倍氏が総裁選までに森友加計問題をごまかしつつ、なんとか乗り越えることができたとしても、あるリスクが存在します。

それは、国民の長期政権に対する飽きです。

 

「安倍政権のビジネスモデル」といわれているアベノミクスは、手詰まり感が鮮明になってきました。

 

アベノミクスの基本コンセプトである「3本の矢政策」のうち、財政出動と異次元の金融緩和は実現しましたが、成長戦略は政権発足から5年半が経過した今もその影すら見えません

 

確かに大企業は好業績を維持していますが、これは円安効果と新興国の失速という「アメリカからのプレゼントと敵失の産物」のおかげともいえます。

安倍氏を支持する経済関係者であっても、アベノミクスの劣化を否定することは難しいはずです。

 

リーマンショック級は起きないにしても、リーマンショックの100分の1程度の世界経済の混乱が起きればアベノミクスは完全に否定され、「安倍氏に退陣願いたい」という声が噴出するかもしれません。

また、安倍氏のこれまでの外交と経済運営の実績は、自他ともに認めるところで、後世に語り継がれることは間違いありません。

 

現時点ですでに「やり切った」感のある安倍氏なら、総裁選に出馬して敗れる姿を国民にさらすよりは、潔く出馬を断念する道を選択するかもしれません。

 

安倍氏が総裁選への出馬を取りやめ、特定の総裁候補者をバックアップしてその人を当選させれば、安倍氏は新政権の後ろ盾となって影響力を保持し続けることができます。

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安倍氏が3選なら株価はどうなる

自民党総裁の任期は1期3年最長3期9年までとなっています。

安倍氏が自民党総裁選に勝利すれば3期目に突入することになり、政権交代が起きなければ2021年秋まで政権運営することになります。

株価上昇シナリオ

安倍氏が3選されれば、市場は政権安定を好感し株価は上昇する可能性があります。

しかも、もし麻生太郎副総理・財務相が、財務省公文書改ざん問題で辞任せず、次の安倍政権でも同じ職に就いていれば、市場はさらに楽観視するでしょう。

 

というのも麻生氏は国民的な人気は高くないのですが、財務省官僚や日本銀行員、経済界のトップたちから好かれています。

そのため「安倍麻生のAAコンビ」の政権運営が継続すれば、少なくとも株価が下がる要因にはならないでしょう。

 

 

また、安倍氏が3選を果たせばしばらくはライバル不在になります。

油断さえしなければ」安定した政権運営ができ、しかも2020年には株価上昇にとってこれ以上の味方はいない東京五輪が控えています。

株価下落シナリオ

では総裁選後の安倍政権の最大の弱点である「油断」にはどのようなものがあるでしょうか。

つまり、安倍氏3選後に株価が下落するとしたら、何が要因となるでしょうか。

 

1つは、アベノミクスへのテコ入れをサボることです。

 

「安倍政権は会議が多すぎる」という批判は2017年ごろから挙がっています。

つまり、会議だけ開いて「やっているふり」をしているだけ、というわけです。

 

アベノミクスの肝である成長戦略は、花が咲いている状況とは到底いえません。

種まきが終わったのかどうかさえわかりません。

 

総裁選後の安倍氏が、国内外から「ニュー・アベノミクス」と評価されるほどの規制緩和や産業育成に取り組まなければ、株式市場も安倍政権を見透かすはずです。

 

特に怖いのは外国人投資家で、彼らから「安倍氏は口ばかり」という烙印を押される前に、画期的な経済政策を打ち出し、結果を市場や国民に示す必要があります。

 

もうひとつの油断は、安倍氏の憲法へのこだわりです。

 

憲法への是非はここでは触れませんが、安倍氏は株価と政権が安定すると憲法改正に意欲を示し、株価と支持率が低下すると憲法改正のトーンを弱めることを繰り返してきました。

 

つまり、3選を果たした安倍氏が気分を高揚させ、しかも「最後の総裁任期」をラストチャンスととらえて経済政策より憲法論議に力を入れれば、市場は安倍政権を見離すでしょう。

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安倍氏が再選されなかったら株価はどうなる

安倍氏が自民党総裁選に落選または出馬せず、新しい総裁・総理が誕生したら株価はどうなるでしょうか。

 

株価の一時的なショック安は免れないでしょう。

 

ただ、岸田氏または野田氏のどちらかが新総裁になれば、アベノミクスを継承することは確実なので、市場はそのうち落ち着きを取り戻すかもしれません。

両氏とも自民党幹事長を経験していないなど、政権運営は未知数です。

 

宮澤喜一氏、海部俊樹氏、宇野宗佑氏など短命政権で終わった首相の多くは幹事長を経験していません。

幹事長を経験していないと、自民党総裁の大きな仕事である党運営ができないのです。

 

党をグリップできなければ政権運営に集中できず、政権がぐらつけば市場が動揺し株価の急落を引き起こすかもしれません。

 

では石破氏が新総裁・総理に就任したらどうでしょうか。

 

石破氏は幹事長を歴任していますし、政治手腕も確かですし、国民的人気もあります。

また石破氏は「反安倍」といっても、岸田氏や野田氏と比べればというだけで、安倍氏の政敵というほど反抗しているわけではありません。

 

石破氏が幹事長を務めたのは、安倍総裁ときです。

石破氏のこうした経緯を考え合わせると、市場は新総裁・総理に動揺するどころか、石破氏の新鮮さに期待してご祝儀相場を展開するかもしれません。

 

つまり、株価上昇が期待できます。

ただもちろん、石破氏が総裁選に当選して新首相になり、株価が下落する可能性はゼロではありません。

 

安倍氏や安倍氏の盟友の麻生氏が、石破政権に協力せず、むしろ足を引っ張る行動に出たら、政局が混乱しそれに引っ張られる形で株価も下がるでしょう。

 

安倍氏は自民党最大の細田派の出身ですし、麻生氏が率いる麻生派は第2派閥です。

だからといって石破氏が細田派、麻生派に配慮した人事を行えば新味は薄れ、市場からそっぽを向かれてしまいます。

 

政局が混乱するよりはましなので株価の下げ要因にならないにしても、少なくとも上げ要因にはならないはずです。

 

また、安倍氏以外の誰が自民党の新総裁・総理に就任しても、あの手ごわいトランプ米大統領と1から人間関係を構築しなければなりません。

ということはしばらくの間、日米関係がぎくしゃくするリスクがあり、これは株価の明確な下げ要因となります。

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まとめ~政治が株価に大きな影響を与える時代

かつて日本は経済一流、政治三流といわれていました。

これは、政治が安定さを欠いても経済界はそれに翻弄されることなく成長し続けていた、という意味です。

 

しかし、経済のグローバル化とバブル後の失われた20年の後遺症で、大企業のなかにも独り立ちする筋力を持っていなところもあります。

 

政府・自民党が労働者の賃金アップを経済界に依頼するなど、政治による経済界へのコミットメントが2018年現在の好景気を支えています。

 

政財官一体の経済運営は今後も欠かせないのです。

そういった意味では、政治が株価に大きな影響を与える時代になったといえます。

 

これが、個人投資家が次の自民党総裁選に注目しなければならない理由です。

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