- 2019-3-29
- ライフ・日常
日本では、1960~70年代の高度成長期に大量の産業廃棄物を生み出してきました。
その後廃棄物処理法や資源有効利用促進法などの環境対策の法律が制定され、今や「リサイクル」という言葉が広く一般的となりました。
近年では、機関投資家が企業の環境への貢献を評価項目に加えた「ESG投資」が本格化してきています。
単に利益を稼ぎ出すのでは無く、環境を含めた社会全体への貢献と一体でビジネスモデルを考えることが求められるようになってきているのです。
そういった意味では、今後も最小限の環境負荷でビジネスを展開することが重要でしょう。
今回はリサイクル文脈で環境負荷軽減へ貢献している企業を「リサイクル」関連銘柄として取り上げ、株価動向やその背景について分かり易くご紹介したいと思います。
目次
1.「リサイクル」関連銘柄に期待
「リサイクル」関連銘柄とは、リサイクルを中心とする環境負荷軽減へ貢献している企業を指します。
1-1.「リサイクル」関連銘柄とは?
リサイクル関連の中心的な存在が、技術提供あるいは開発に注力している企業群です。
日本では既にリサイクルという言葉が一般化してきていますが、産業分野ではまだまだ環境への悪影響が指摘されています。
例えばストローです。
近年ヨーロッパを中心にプラスチック製のストローを廃止する動きが顕在化しています。
現状は紙製ストローへのシフトが進んでいますが、仮にプラスチック製ストローのリサイクル技術が促進されれば環境負荷軽減へ大きな貢献となるでしょう。
また、産業廃棄物を利用可能な素材として再生する技術を供給している企業もこうしたグループに属しています。
日本ではまだまだ産業廃棄物のリサイクル余地が残っていますから、こうした企業にも注目が集まりやすいのです。
その他、リサイクル関連銘柄には、リユースなどの事業を手掛ける企業や、再生エネルギー活用のための技術・ソリューションを提供している企業なども含まれるでしょう。
1-2.なぜ「リサイクル」関連銘柄は株価が上昇するのか?
「リサイクル」関連銘柄が株式市場で注目されている理由は、社会的な環境意識の高まりを背景とする潜在的な市場成長力です。
日本ではリサイクル自体一般化しましたが、国際的に見ればまだまだ「リサイクル先進国」とは言えません。
国立環境研究所のHPには、「OECD加盟国の廃棄物処理とリサイクル(2013年)」のグラフが掲載されています。
この資料によると、リサイクル率はトップのドイツが65%、次いで韓国が59%となっています。
一方、日本は19%となっており、上位国に比べれば圧倒的に低い数値に留まっています。
世界的な潮流の中で、日本もリサイクルへの社会的な要請が高まってくることは間違いないでしょう。
また代表的な例が飲料用のPETボトルでしょう。
PETボトルリサイクル推進協議会によれば、PETボトルのリサイクル率は過去10年間85%で推移しており、足踏み状態にあります。
そこで全国清涼飲料連合会は、2018年11月末に「清涼飲料業界のプラスチック資源循環宣言」を公表し、2030年までにPETボトルの100%有効利用を目指すと宣言しました。
こうした業界を挙げた動きは今後高まりを見せていくことが想定されます。
そうした中で活躍が期待されるのが「リサイクル」関連銘柄です。
株式市場では、こうした文脈によって市場拡大の可能性があるリサイクル関連市場に対し注目しているのです。
- 「リサイクル」関連銘柄とは、リサイクルを中心とする環境負荷軽減へ貢献している企業を指します。
- 長期的なリサイクル率上昇に向けた機運の高まりから株式市場では注目を集めている
2.リサイクル関連銘柄の推移
過去に上昇した関連銘柄と、その上昇理由を見ていきましょう。
2-1.リサイクル需要の増加期待から株価が上昇
【2151】タケエイはリサイクル関連銘柄の中心的存在です。
同社は、廃棄物の収集から再資源化・最終処分までを一貫でサービスを提供している企業です。
顧客から一般・産業廃棄物を回収したものは、最終的には土木資材やバイオマス発電燃料、鉄・非鉄原料に再生されます。
同社が株式市場から注目されたのは、2018年度の中間決算発表後です。
決算補足資料によると、都市再開発事業等の民間投資やインフラ整備等の公共投資から廃棄物の受入量が増加したと記載があります。
ご存知のように、今建設業界は活況です。
東京オリンピックに絡む観光施設の建設やオフィスビルの供給量増加によって都心部では大型の建設現場があちこちで見られます。
また、安倍政権以降の公共投資拡大によって土木工事も増加しています。
こうした動きは2020年頃まで持続すると想定されており、同社への将来的な期待感が高まったと推測されます。
そうした背景から、中間決算以降の2ヵ月間で3割弱と大幅に株価が上昇しました。
今後期待が実績となって顕在化した場合、さらに株価が上昇する可能性があるでしょう。
2-2.リユース関連企業として注目される企業が新規上場
2つ目にご紹介したいのが、【4385】メルカリです。
社名を一度は耳にした方も多いのではないでしょうか。
同社は、スマホアプリの「mercari」を提供しています。
誰でも簡単に自分の物を出品したり、買い取ったりすることが出来るCtoC(個人対個人取引のこと。BtoCは企業と個人)のビジネスを展開しています。
今までは廃棄されていた様々な物が「mercari」を通じて「リユース」されている点で、リサイクル関連銘柄の1つと言って良いでしょう。
それまではリサイクルショップまで段ボール一杯の不良品を持ち込んだ結果、思うような値段で売れなった、という経験が多いのではないでしょうか。
しかし「mercari」では、自分で価格を決めることが出来ますし、重たい不良品を運ぶ必要もありません。
こうした便利さが後押しし、昨年10~12月の3ヶ月間における取引額は1,000億円を超えています。
同社は上場前からかなり注目されている銘柄で、公募価格は3,000円でした。
しかし、上場した昨年6月19日の初値は5,000円と公募価格を7割近く上回る価格となりました。
現在は米国進出などの新規投資によって営業赤字となっていますが、国内外での将来性には引き続き高い注目が集まっているようです。
- 産業廃棄物を生む業界環境が好転すると、リサイクル関連銘柄に注目が集まりやすい
- リユース関連事業を展開する企業にも注目が集まっている
3.「リサイクル」関連銘柄
銘柄 | 備考 |
【5101】横浜ゴム | 自動車用のタイヤやホイールなどを製造・販売する。自動車向けの接着剤も手掛けており、リサイクル可能な接着剤を開発している。 |
【3950】ザ・パック | 百貨店やアパレル業界向けの紙袋や食品販売業界向けに紙箱を提供。リサイクルしやすい紙素材の開発に注力。 |
【4221】大倉工業 | 包装用プラスチックフィルムや住宅向けの建材を製造・販売する。リサイクル素材を用いた住宅向け化粧板の開発を進めている。 |
【4245】ダイキアクシス | 排水処理設備や排水処理施設の管理サービスを提供。廃食用油をリサイクルしたディーゼル代替燃料の販売も手掛ける。 |
【6965】浜松ホトニクス | 光センサや光学製品などを製造・販売している。光半導体事業で培った技術がペットボトルのリサイクルに応用することが期待される。 |
【5724】アカサ理研 | 集荷した不良品・廃棄品から有価金属を回収し電子部品メーカーなどに提供。研究開発分野にてリサイクル技術の進化に注力中。 |
【6255】エヌ・ピー・シー | 太陽電池製造装置を始め、自動化・省力化装置なども製造。研究開発にて太陽光パネルのリサイクルの開発に取り組む。 |
【3035】ケイティケイ | 使用済みトナーカートリッジを回収して再充填し顧客に供給する「リパックトナー」を提供。その他インクでもリサイクル商品を提供している。 |
【3168】黒谷 | 銅を中心とした非鉄金属のリサイクルを専業とする。大型船舶のスクリュー向けでは高いシェアを有する。 |
【1716】第一カッター興業 | 工場などの生産設備における各種洗浄作業の他、産業廃棄物の中間処理設備なども提供。リサイクル事業も手掛ける。 |
4.おすすめ「リサイクル」関連銘柄
最後に、注目すべき「リサイクル」関連銘柄を紹介します。
4-1.【3491】レンゴー
市場 | 東証一部 |
業種 | パルプ・紙業 |
単位 | 100株 |
比較される銘柄 | 日本紙、大王紙、王子HD |
企業概要 | 板紙・段ボールの製造・販売を行う国内トップクラスの企業 |
リサイクル可能な機能性段ボールの開発に注力しており、リサイクル関連銘柄として注目される可能性がある。
4-2.【4022】ラサ工業
市場 | 東証一部 |
業種 | 化学業 |
単位 | 100株 |
比較される銘柄 | カーリットH、大有機、ハリマ化成G |
企業概要 | リン系製品を柱に基礎化学品や機能性肌着の消臭剤などを製造・販売している企業 |
次世代バイオマス燃料を製造する高効率粉砕機を開発しており、リサイクル関連銘柄として注目されやすい。
- リサイクル分野で研究開発を行っている企業は今後注目される可能性がある
- 循環型社会に貢献する技術を提供している企業は注目されやすい
5.まとめ
日本企業の多くがリサイクル文脈で研究開発に取り組んでいます。
リサイクル自体をビジネスとしている企業はもちろんですが、全く関係の無い業界に属する企業でも、産業廃棄物のリサイクルを目指しているのです。
また、機関投資家でも環境を重視する動きが盛り上がっています。
それが「ESG投資」です。
環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字を取った用語です。
この3つを重視して投資先企業の選別を行うというものです。
こうした環境負荷軽減への社会的な要請は今後益々高まっていくでしょう。
長期的なリサイクル需要の拡大を捉え、「リサイクル」関連銘柄に投資をしてみると将来大きなリターンを獲得出来るかも知れません。
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