- 2021-2-12
- ビジネス
日本人は多くの残業をこなすことが美学とされてきました。
その結果、諸外国に比べ休暇が少ないことに加え、生産性が低いことが指摘されてきました。
そうした中で、安倍政権のもと進められているのが「働き方改革」です。
長時間残業の是正や多様な働き方の定着に向けて、様々な施策が講じられています。
その代表的なものが「テレワーク」です。
場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を指し、一部企業で導入が始まっています。
またコロナウィルスの蔓延で、政府も重い腰を上げテレワークの推奨に乗り出すようになった点にも注目です。
今回はテレワークの推進を背景に恩恵を享受する企業を、「テレワーク」関連銘柄として、株価動向やその背景について分かり易くご紹介したいと思います。
関連する企業を取り上げ、株価動向やその背景について分かり易くご紹介したいと思います。
目次
1.「テレワーク」関連銘柄に期待
「テレワーク」関連銘柄とは、テレワークの推進によって恩恵を享受する企業を指します。
1-1.「テレワーク」関連銘柄とは?
「テレワーク」関連銘柄は、大きく2つに分けることが出来ます。
1つはテレワーク導入を検討している企業向けにサービスを提供している企業群です。
テレワークとは、情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことを指します。
つまり、テレワークを実現するためには、いつでもどこでも働ける環境が整備されている必要があります。
社外から社内ネットワークにアクセスし、ファイルの保存や更新を行えるようなシステムを提供する企業は「テレワーク」関連銘柄と言えるでしょう。
また、テレワーク関連銘柄のもう1つのグループが、テレワークを導入した企業群です。
テレワークの効果は、オフィスコスト削減や生産性向上、優秀な社員の確保などが挙げられます。
テレワークを先んじて導入している企業は、こうしたメリットを享受する可能性があり、競争力の高さを保持することが出来ると言っても良いかもしれません。
以上の2つにグループに属する企業群については、株式市場から「テレワーク」関連銘柄として高い注目を集めているのです。
1-2.2021年のテレワーク関連銘柄の動きについて
テレワーク関連銘柄は、2020年の新型コロナ相場で大きく買われた代表的なテーマ株となっていますが、2021年は上昇の反動から苦しい値動きとなっている銘柄が目立ちます。
新型コロナ第3波を受けて、2021年1月7日から首都圏を中心に2度目の緊急事態宣言が発令され、政府は出勤による感染リスクを抑えるため、企業にテレワークの徹底を再度呼びかけました。
しかし日本生産性本部が2回目の緊急事態宣言下の2021年1月22日に行った調査によると、テレワーク実施率は22.0%に留まったとのことです。
1回目の緊急事態宣言下の2020年5月に行った調査では31.5%だったことから、テレワークは実施できても実施しない企業が多くなっているものと見られます。
企業がテレワークを実施しない理由として見えてくるのが、テレワークによる生産性の低下です。
パーソル総合研究所が2020年11月に行った調査によると、テレワークの生産性は出社時と比べて8割強に留まっているという結果になりました。
さらに、野村総合研究所が2020年12月に発表した「新型コロナウイルスと世界8か国におけるテレワーク利用 ~テレワークから『フレックスプレイス』制へ~」によると、日本は諸外国と比べてテレワークによる生産性の下落が高い結果になったとのことです。
ただ日本の労働生産性の低さを解消する上では、テレワークなどのデジタル化を上手く活用することは欠かせないため、日本社会のテレワークとの付き合い方は新型コロナを抜きにしても大きな課題となっていきそうです。
- 「テレワーク」関連銘柄とは、テレワークの推進によって恩恵を享受する企業を指す
- 株式市場では政府の「働き方改革」推進に伴って市場拡大への期待が集まっている
2.「テレワーク」関連銘柄の推移
新型コロナウィルスが広まり始めた2020年1月から3月に掛けて上昇しているテレワーク関連銘柄を見ていきましょう。
2-1.テンバガー達成のテレワーク関連銘柄!【3788】GMOグローバルサイン・ホールディングス
GMOグループ系でクラウドや電子認証などを手掛ける【3788】GMOグローバルサイン・ホールディングスは、2020年にテンバガーを達成したテレワーク関連銘柄です。
同社が手掛ける電子認証サービス「GMO電子印鑑Agree」は、テレワークにおけるセキュリティに欠かせないものであり、デジタルにおけるハンコに相当するものです。
同社の株価は、2020年1月初めには2,529円を付けており、コロナショックでは3月19日に1,381円まで下落。その後は大きく反発し、菅政権の目玉政策であるデジタル庁創設も追い風となり、10月15日には14,210円まで上昇しました。
2020年の最大上昇率は10.28倍のテンバガーとなっています。
しかし、10月に高値を付けてからは暴落となっており、12月25日には8,160円まで下落。2021年はわずかに反発していますが、10,000円まで戻すのがやっとの状況です。
2-2.【4776】サイボウズ
テレワークに欠かせないグループウエアソフトの開発を手掛ける【4776】サイボウズは、東証を代表するテレワーク関連銘柄です。
同社の株価は、2020年1月初めには1,454円を付けており、3月13日には1,177円まで下落。
コロナショックから真っ先に反発し、9月24日には3,800円まで上昇しました。
コロナショックからの最大上昇率は3.22倍と、他の銘柄と比べるとやや控えめですが、同社は長期的に上昇している成長株であり、2013年からの上昇率で見ると最大15倍以上となっています。
ただ、2020年9月に高値を付けてからは下落しており、12月22日には一時2,488円まで下げました。
直近8年間の長期チャートで見てみると、最大の下落率となっており、新型コロナ相場で大きく上昇した反動が見て取れます。
上記2銘柄以外でも、電子契約サービス「クラウドサイン」を運営する【6027】弁護士ドットコムは2020年に最大5.23倍となったテレワーク関連銘柄ですが、高値を付けてからは最大-40%近い調整となっています。
テレワーク関連銘柄は、2020年に大きく上昇した反動で、2020年末から2021年に掛けては厳しい値動きとなっている銘柄が目立つ状況です。
- 業績予想の上方修正をきっかけに注目される場合がある
- 既存事業が好調であり、更にテレワーク向け事業の成長が期待出来る銘柄は注目される可能性がある
3.「テレワーク」関連銘柄
銘柄 | 備考 |
【3040】ソリトンシステムズ | 認証を中心とするITセキュリティ関連製品の開発を行う。テレワーク用途の関連製品及びサービスを提供。 |
【4397】チームスピリット | 勤怠管理や工数管理などのクラウドサービスを手掛ける。働き方改革の実現のために社員の行動を見える化するサービスを提供。 |
【9143】SGホールディングス | 国内宅配便事業者でトップクラス。企業向け物流サービスも手掛ける。テレワークの導入に積極的なスタンス。 |
【1973】NECネッツエスアイ | クラウドサービスから通信工事まで幅広く手掛ける。働き方改革向けのソリューションも提供している。 |
【3681】ブイキューブ | Web会議やテレビ会議向けの製品・ソリューションを提供している。テレワーク導入によって同社の製品需要が拡大する可能性がある。 |
【3900】クラウドワークス | 国内最大級のクラウドソーシング事業者。テレワークが浸透すると共に働き方の多様化に伴い恩恵を享受する可能性がある。 |
【1717】明豊ファシリティワークス | 建設コンサルティング企業であり、公共施設や工場など様々な分野で実績を有する。テレワーク。テレワークによる働き方を推進。 |
【9613】エヌ・ティ・ティ・データ | NTTグループのシステムインテグレータ業者。総務省・厚生労働省などと連携しテレワークに取り組んだ事例あり。 |
【2168】パソナグループ | 人材仲介や人材派遣などを手掛ける大手。東京都「平成30年度テレワーク等普及推進事業」を受託している。 |
【4 776】サイボウズ | 「kintone」や「サイボウズoffice10」などの企業向けシステムを提供。テレワーク・在宅勤務向けシステムを提供。 |
4.おすすめ「テレワーク」関連銘柄
最後に、注目すべき「テレワーク」関連銘柄を紹介します。
4-1.【4776】サイボウズ
市場 | 東証一部 |
企業概要 | グループウェアソフトの開発を手掛ける。クラウド向けが強み。 |
サイボウズは、テレワークに欠かせないグループウェアソフトの開発を手掛けており、東証一部を代表するテレワーク関連銘柄です。
今後もテレワークの広がりとともに株価が上昇することが期待される、長期投資におすすめの成長株です。
4-2.【3681】ブイキューブ
市場 | 東証一部 |
企業概要 | ネット会議や遠隔治療といった遠隔操作ソフトの開発を手掛ける。 |
ブイキューブは、テレワークだけでなく遠隔治療やオンライン教育など遠隔操作ソフト全般を手掛けているIT企業です。
「テレワーク」「遠隔医療」「オンライン教育」はいずれも成長テーマであり、長期投資におすすめの銘柄です。
4-3.【4484】ランサーズ
市場 | 東証マザーズ |
企業概要 | クラウドソーシングサービス大手「ランサーズ」を運営する。 |
ランサーズは、クラウドソーシングサービス大手「ランサーズ」を運営していることで知られます。
同様のサービスを手掛ける【3691】リアルワールドが2月に暴騰しましたが、テレワークとの繋がりとしてクラウドソーシングサービスに再び注目が集まってもおかしくありません。
同じくクラウドソーシングサービス大手の「クラウドワークス」を展開している【3900】クラウドワークスとともに注目しておきましょう。
- テレワーク導入企業向けのサービスを提供している企業は注目されやすい
- 働き方改革の文脈で関連のある企業は「テレワーク」関連銘柄としても注目されやすい
5.まとめ
通勤ラッシュに揉まれながら会社に通勤する日々。まだ会社で働くことが「普通」であることには変わりません。
しかしながら、かつての日本人における勤務スタイルが今ようやく変化しつつあります。
今後は、多様な働き方を提供することが優秀な人材を集め、企業の競争力を向上させることに直結する時代がやって来るかも知れません。
そうした状況を見据え、各企業が「働き方改革」に取組み始めています。
「テレワーク」関連銘柄にとっては、中長期的に追い風の事業環境が続くでしょう。
今の内から株式投資を行うことによって、将来大きなリターンを獲得することが出来るかも知れません。
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