- 2021-9-22
- 医療
「再生医療」という言葉をご存知でしょうか。
再生医療とは、欠損・損傷した組織や臓器などを、体外で培養した細胞を用いて修復再生し、機能を補完する医療のことを指します。
従来の医療は、欠損した機能などに対し補てんすることが主眼でした。
しかし再生医療の場合は、失われた機能そのものを再生するため、根本的な解決に繋がる可能性が高いと言えるでしょう。
今後益々「再生医療」への注目度は高まっていくことが予想され、これに関連する企業は大きな事業機会を持っているのです。
今回は「再生医療」に関連する企業を取り上げ、株価動向やその背景について分かり易くご紹介したいと思います。
目次
1.「再生医療」関連銘柄に期待
「再生医療」関連銘柄とは、再生医療の応用範囲拡大によって恩恵を享受する企業を指します。
1-1.「再生医療」関連銘柄とは?
経済産業省の資料には、再生医療周辺産業の市場規模及び将来予測が記載されています。
国内における市場規模は、2012年に170億円、2020年に950億円になると予測されています。
更に、2030年には5,500億円、2050年には1.3兆円と2012年に比べて約10倍にまで拡大することが見込まれている「超有望市場」と言えるでしょう。
また、グローバルで見ると市場規模は国内以上に飛躍的に増加するようです。
先程の経済産業省の資料によると、全世界では市場規模が2012年に2,400億円、2020年に1.1兆円、2030年に5.2兆円、2050年に15兆円にまで拡大する予測です。
再生医療は元々、1970年代に表皮細胞や軟骨細胞等の分化細胞の培養技術が確立されたところから、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中教授が作ったiPS細胞など、ここ30~40年間で蓄積されてきた技術です。
2013年に改正された薬事法によって、実用化までのスケジュールが短縮化されました。
今後も実用化に向けた体制整備が進むことによって、様々な分野で再生医療が応用されていくことが期待されています。
再生医療の応用範囲拡大関与している企業を「再生医療」関連銘柄として、ご紹介していきたいと思います。
1-2.なぜ「再生医療」関連銘柄は株価が上昇するのか?
「再生医療」関連銘柄が株式市場で注目されている理由は、中長期的な市場規模の成長性です。
再生医療のメリットは大きく2つあります。
治療期間の短縮
従来の治療法だと、闘病生活は長期間に及んでしまうことがありました。
例えば、投薬治療や人工透析、ペースメーカー、人工関節などです。
これらは医療機器や医療器材に依存せざるを得ません。
結果として治療期間が長くなることで、経済的かつ精神的な負担が増してしまいます。
一方で、再生医療は細胞や組織を再生することを通じて、失われた人体機能そのものを回復させる治療法です。
そのため、長期間に及ぶ投薬治療や医療器材の使用も必要がなくなり、闘病生活が短縮化されるのです。
治療法が存在しなかった怪我・病気に対しての可能性
例えば脊椎損傷です。
外傷などによって感覚・運動・自律神経系の麻痺が現れ、日本国内で約15万人の患者が存在すると言われています。
しかし再生医療の登場によって、回復の可能性が研究で指摘されています。
これら2つのメリットを背景として、再生医療には多くの期待が寄せられているのです。
今後も研究支援や実用化促進などの動きが政府含めて進められていくことが予測されます。
結果として今後の市場規模拡大が期待されているのです。
1-3.再生医療は着実に発展している
iPS細胞に代表される再生医療関連銘柄は、ここ数年間はバイオ株の中では大きな上昇が見られないテーマ株となっていました。
特に再生医療関連銘柄の代表格となっていた【4592】サンバイオが2019年1月から大暴落となってしまったことが、多くの投資家を委縮させてしまった面は否めません。
サンバイオの株価は2019年1月に12,730円を付けていましたが、2021年9月時点では約1,200円と、10分の1以下になってしまっています。
ただ2019年10月にIPOした【4880】セルソースが、サンバイオに代わる再生医療関連銘柄として新型コロナ相場でも大きな上昇を見せており、IPO上場から2年で一時10倍以上の値上がりとなっています。
また2021年6月にIPOした再生医療ベンチャーの【7096】ステムセル研究所は、公開価格から+73%の初値を付けて幸先の良い上場スタートとなりました。
再生医療の進歩は目覚ましく、人生100年時代において人々のQOLを維持する上では最も期待される最新テクノロジーのひとつです。
日本では2025年に人口ボリュームの多い団塊の世代が75歳以上の後期高齢者入りしてくることから、今後ますます再生医療が社会・経済ともにより注目を集めるフェーズに入ってくるものと思われます。
- 「再生医療」関連銘柄とは、再生医療の応用範囲拡大によって恩恵を享受する企業を指す
- 治療期間短縮及び治療範囲拡大を背景として再生医療の市場拡大に期待が集まっている
2.「再生医療」関連銘柄の推移
過去に上昇した関連銘柄と、その上昇理由を見ていきましょう。
2-1.最注目の再生医療関連銘柄!【4880】セルソース
脂肪由来の幹細胞加工サービスや血液由来加工受託サービスなどの再生医療事業を手掛ける【4880】セルソースは、再生医療関連銘柄として最も注目されている銘柄です。
同社は、2019年10月にIPOして以来、右肩上がりの上昇を続けています。
同社の株価は、2019年10月のIPO上場時は2,006.7円(株式分割後の価格に換算)を付けていましたが、2021年9月14日には22,290円まで上昇。
上場から2年間で約11倍の上昇となっています。
直近1年間で見てみても、2020年9月初めに付けていた7,450円から最大+199%の上昇率です。
2-2.2021年IPOの再生医療関連銘柄!【7096】ステムセル研究所
再生医療を目的とした、さい帯血の分離事業を手掛けている【7096】ステムセル研究所は、2021年IPO銘柄としても注目の再生医療関連銘柄です。
同社は2021年6月25日に東証マザーズにIPOし、公開価格2,030円に対して、初値は+72.5%上回る4,830円を付けました。
7月21日には7,220円まで上昇し、初値から最大+49%となっています。
ただ上場後は乱高下が目立ち、2021年9月時点では6,000円前後で推移する展開となっています。
- 再生医療分野関連でポジティブなニュースが報じられた企業は注目されやすい
- アナリストレポートで「買うべき」と判断された企業は注目されやすい
3.「再生医療」関連銘柄
銘柄 | 備考 |
【7774】ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング | 再生医療等製品及び関連製品の研究開発、製造、販売を主要な事業として展開。再生医療分野に注力。 |
【4593】ヘリオス | 細胞医薬品・再生医療等製品の研究・開発・製造を行う。幹細胞技術を活用した「体性幹細胞再生医薬品」及び「iPSC再生医薬品」分野で製品を提供。 |
【4901】富士フィルムホールディングス | 事務用プリンターでは国内トップクラスのシェアを誇る。ヘルスケア分野では再生医療分野に注力。 |
【4506】大日本住友製薬 | 精神神経やガン分野を中心に医療用医薬品を手掛けている。新規分野では再生医療分野に経営資源を積極的に投下している。 |
【1980】ダイダン | 空調工事を中心に電気工事なども行う設備工事会社。新規分野で再生医療分野やクリーンルーム関連に注力している。 |
【4977】新田ゼラチン | ゼラチンにおいて国内・海外共にトップクラスのシェアを有する。活用分野において再生医療など新規分野にも注力。 |
【8715】アニコムホールディングス | ペット保険事業を主力に動物病院支援サービスなどペット関連の事業を幅広く手掛ける。2016年に富士フィルムと再生医療分野で合弁企業を設立。 |
【2372】アイロムグループ | 再生医療や遺伝子治療の分野を得意とする治験施設支援事業を展開。iPS細胞作製技術等のライセンス活動にも注力。 |
【4584】ジーンテクノサイエンス | 北海道大学発のバイオベンチャーで、バイオ新薬などの開発を手掛ける。再生医療分野での新規事業立ち上げに注力。 |
【7776】セルシード | 細胞シート再生医療を中心に開発・製造・販売。食道再生上皮シートおよび軟骨再生シートを、早期事業化を目指すパイプラインとして、開発を進めている。 |
4.おすすめ「再生医療」関連銘柄
では、最後に注目すべき「再生医療」関連銘柄を紹介します。
4-1.【6340】澁谷工業
市場 | 東証一部 |
業種 | 機械業 |
単位 | 100株 |
比較される銘柄 | トムソン、住友重機械工業、東芝機械 |
企業概要 | 飲料などの液体充填システム(ボトリングシステム)を製造・販売している企業です。 |
既存技術を用いて細胞培養・細胞調製システムを設計・製作しており、再生医療文脈で注目される可能性。
4-2.【4748】構造計画研究所
市場 | ジャスダック |
業種 | 情報・通信業 |
単位 | 100株 |
比較される銘柄 | 日本アジアG、エコモット、ULSグループ |
企業概要 | 建設分野や情報通信分野での構造設計を手掛ける企業です。 |
再生医療分野でのシミュレーションなど新規分野として注力しており、注目される可能性。
- 再生医療分野のイメージが薄い企業は、ニュースなどで一気に注目される可能性が高い
- 新規事業として今後再生医療分野での収益化が期待される銘柄は注目されやすい
5.まとめ
今後益々応用範囲の拡大が期待されている「再生医療」。
これまでの長い治療期間や、治療法が見つかっていなかった病気でも、再生医療の登場によって課題を解決する可能性があります。
その結果、市場規模は国内外で飛躍的に拡大することが予測されているのです。
一方で、市場規模の成長率が加速するのは2020年以降になるでしょう。
つまり、「再生医療」関連銘柄の業績に大きなインパクトが現れるのは早くて2~3年先の話です。
「再生医療」関連銘柄に投資をする際は、短期的な視点ではなく中長期的な時間軸でじっくりと取り組む必要があるかも知れません。
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