- 2021-8-19
- 医療
次世代通信規格5Gの商用化でも注目される「遠隔医療」
2018年4月の診療報酬改定で「オンライン診療料」や「オンライン医学管理料」が新設されるなど、政府は2025年問題の解決に向けた在宅治療強化の一環として遠隔医療を充実させています。
コロナウイルス禍でも遠隔医療が注目されており、各方面で注目される遠隔医療に熱視線が注がれるでしょう。
【4596】窪田製薬ホールディングスの子会社が遠隔眼科医療モニタリングデバイスの臨床試験を完了するなど、遠隔医療関連銘柄に注目が集まります。
今回は、そんな5G実用化の最右翼である「遠隔医療関連銘柄」に注目していきましょう!
目次
1.遠隔医療とこれまでの関連銘柄動向
2025年問題に向けて在宅医療の充実がカギとなることから、遠隔医療に大きな注目が集まっています。
1-1.遠隔医療とは
通信技術を利用して医療行為を行うことです。
インターネットやテレビ電話などを活用して医師が遠隔地の患者に対して診療行為を行うことを指し、「テレメディスン」とも呼ばれます。
遠隔医療が実用化されれば、患者が病院まで行く必要がなくなり、また離島や僻地の医師不足問題の解消に繋がることも期待されます。
近年、遠隔医療には追い風が吹いています。
2018年4月に行われた診療報酬改定では、「オンライン診療料」や「オンライン医学管理料」が新設され、厚生労働省はICTを使った遠隔医療を積極推進する意向がうかがえます。
厚生労働省が遠隔医療を推進する背景にあるのは、人口ボリュームが多い団塊の世代が後期高齢者入りする“2025年問題”があります。
今後、高齢者人口が急増することで、病院で入院治療を受けるのは難しくなるため、入院が必要となる病気の治療であっても在宅治療をする必要性が社会的に高まってきます。
在宅治療の充実において遠隔医療の推進は必要不可欠なものであるため、2025年問題に向けて、誰もが遠隔治療を受けられる環境を整備することが急務となっています。
1-2.コロナウイルスで遠隔医療も注目が集まる
「テレワーク」や「オンライン教育」の陰に隠れてはいるものの、遠隔医療も新型コロナ相場で注目されるテーマ株となっています。
ニュース報道や欧米の状態から、多くの医療機関では新型コロナの患者が殺到して医療崩壊を起こしかねない状況になっているイメージを持ってしまいがちです。
しかし、新型コロナの人的被害が欧米に比べて100分の1程度となっている日本で、むしろ問題になりつつあるのが、多くの医療機関で来院者が激減していることです。
病院は新型コロナの感染リスクが高いことから、多くの人が病院に行く回数を減らしており、このため少なくない医療機関が経営難に陥るリスクがあるとされています。
日本の医療機関は新型コロナによる医療崩壊は起こしていないものの、今後もこの傾向が続くことになれば、経営難からの倒産に追い込まれてしまう病院が出てきてしまってもおかしくありません。
また他の病気の疑いがある患者が、新型コロナの感染リスクを恐れるあまりに病院に行かず、病気の発見が遅れることになってしまう事態も危惧されます。
新型コロナの感染リスクを下げた上で、多くの病院や患者の生活を元通りにするためにも、遠隔医療の積極導入は必至の情勢だと言えるでしょう。
厚生労働省はこれまで遠隔医療に難色を示していましたが、従来は認めていなかった初診患者の遠隔診療も期間限定でできるようにするなど動き始めており、テレワークやオンライン教育のように遠隔医療が進展することが期待されます。
1-3.過去に急騰した遠隔医療関連銘柄
遠隔医療はマーケットでも注目のテーマになっています。
特に、遠隔治療関連で度々話題に上るのが、スマホのテレビ電話で遠隔治療が受けられる遠隔診療サービス「ポケットドクター」です。
「ポケットドクター」は、医師求人サイトを運営する【6034】MRTと、遠隔操作ソフトの開発に定評がある【3694】オプティムが共同開発したスマホアプリです。
「ポケットドクター」は2016年にマーケットで大きな注目を集め、【6034】MRTの株価は2016年1月には592円の安値を付けていましたが、2016年4月には一時9.7倍となる5,780円にまで急騰しました。
ただ、この急騰の反動で、MRTの株価はその後大きく下落しており、2019年2月現在は1,200円前後まで大きく値を下げています。
一方、【3694】オプティムは長期間に渡って株価上昇を続けており、2016年1月には1,770円を付けていた株価は、2018年後半には一時5,000円を突破。
- 遠隔医療とは、通信技術を利用して医療行為を行うこと。在宅医療普及のカギとなるため、2025年問題に向けて厚生労働省が積極推進している。
2.「遠隔医療」×「5G元年」
過去に上昇した関連銘柄と、その上昇理由を見ていきましょう。
2-1.遠隔医療の最新動向
2025年問題の緩和に向けて官民一体となって普及が進められていくと期待される遠隔治療ですが、そのカギを握るのが次世代通信規格「5G」です。
診療においては、ほんのわずかな画像の乱れが診療ミスに繋がりかねません。
5Gでは、現行の4Gの約100倍もの高速・大容量通信が実現できるため、精細な映像が必要とされる遠隔医療においては欠かせません。
NTTドコモは和歌山県立医科大学と協力して、過疎化や医師不足が深刻化する和歌山県内で5Gを活用した遠隔医療実験を実施しており、2020年以降の実用化を目指しています。
また、総務省は遠隔医療や自動運転など通信の遅れが致命的な事故につながりかねない分野においては、インターネット回線が混雑しても一定の通信速度を保てる「優先制御」を設ける方針を固めています。
5G元年と言われる2019年は、5G関連銘柄がマーケットでも注目を集めるものと期待されますが、自動運転と並ぶ5G応用の最右翼である遠隔医療関連銘柄も物色されることが期待されます。
2-2.遠隔医療に力を入れている企業をピックアップ!
遠隔医療に力を入れている企業を見ていきましょう。
医療情報サイト「M3.com」や医師相談サービス「AskDoctors」を運営する【2413】エムスリーは、【3938】LINEと共同でオンライン医療事業を目的とした「LINEヘルスケア」を設立するなど注目が集まります。
ネット会議システムなどを手掛ける【3681】ブイキューブは、遠隔服薬指導事業向けシステムを開発する株式会社ミナカラに、コミュニケーションツール「Agora.io Video SDK」を提供しています。
医師向けコミュニティサイト「MedPeer」を運営する【6095】メドピアは、遠隔診療プラットフォーム「first call」を手掛けるMediplatを傘下に持つことから遠隔医療関連銘柄としても期待されます。
遠隔診療サービス「ポケットドクター」を共同開発する【6034】MRTと【3694】オプティムも、遠隔医療関連銘柄として依然注目です。
M&Aで企業規模を拡大している【7744】ノーリツ鋼機は、遠隔画像診断支援サービスでは国内トップシェアの「Tele-RAD」を手掛けるドクターネットを傘下に置いています。
【4596】窪田製薬ホールディングスは、子会社の(米アキュセラ・インク)が開発する遠隔眼科医療モニタリングデバイスの臨床試験を完了。今後、超小型量産機の開発に着手。
- 「5G元年」となる2019年には、5G実用化の最右翼である遠隔医療関連銘柄が物色されることが期待される。
3.「遠隔医療」関連銘柄
銘柄 | 備考 |
【2413】エムスリー | 医療情報サイト「M3.com」、医師相談サービス「AskDoctors」、LINEと共同でオンライン医療事業を目的とした「LINEヘルスケア株式会社」を設立 |
【2667】イメージ ワン | 医療画像システムの販売 |
【3625】テックファーム | 遠隔診療サービス「MediTel」 |
【3681】ブイキューブ | 株式会社ミナカラが遠隔服薬指導事業向けに開発したシステムにコミュニケーションツール「Agora.io Video SDK」を提供 |
【3694】オプティム | 遠隔診療サービス「ポケットドクター」 |
【3762】テクマトリックス | 中国で遠隔医療事業に関する合弁会社設立 |
【3938】LINE | 【2413】エムスリーとオンライン医療事業を目的とした「LINEヘルスケア」を設立 |
【4596】窪田製薬 | 遠隔眼科医療モニタリングデバイスの開発 |
【6034】MRT | 遠隔診療サービス「ポケットドクター」 |
【6095】メドピア | 傘下に遠隔診療プラットフォーム「first call」を手掛けるMediplat |
4.オススメの遠隔医療関連銘柄3選!
最後に、注目すべき「遠隔医療」関連銘柄を紹介します。
4-1.【2413】エムスリー
市場 | 東証一部 |
企業概要 | 医師向け情報サイトや転職サイトを運営。遠隔医療でも注目を集める。 |
エムスリーは、医師向け情報サイト「M3.com」などを運営している医療情報企業です。2019年10月に日経平均構成銘柄に組み入れされたことでも大きな話題を呼びました。
2019年にはLINEとオンライン医療事業を目的とした「LINEヘルスケア」を共同設立し、2020年にはソニーと新型コロナウィルスの遠隔医療での協業を発表するなど、東証を代表する遠隔医療関連銘柄となっています。
株価は好調そのものであり、新型コロナ相場で上場来高値を更新し続けています。
4-2.【3694】オプティム
市場 | 東証一部 |
企業概要 | 農業・医療分野での遠隔操作ソフトに強みを持つ。 |
オプティムは、遠隔医療サービス「ポケットドクター」を手掛けている遠隔医療関連銘柄です。
同じく遠隔操作ソフトに強みを持つ【3681】ブイキューブが大きく買われていますが、遠隔医療に強いオプティムも新型コロナ相場で上場来高値を更新しています。
新型コロナ収束後にも成長が期待される成長株です。
4-3.【6095】メドピア
市場 | 東証マザーズ |
企業概要 | グループウェアソフトの開発を手掛ける。クラウド向けも好調。 |
メドピアは、医師向けコミュニティサイト「MedPeer」を運営している他、遠隔診療プラットフォーム「first call」を手掛けるMediplatを傘下に持つことから遠隔医療関連銘柄としても注目されています。
他の遠隔医療関連銘柄とともに大きく買われており、新型コロナ相場で上場来高値を更新しています。
5.まとめ
【9437】NTTドコモが遠隔医療の実証実験、【2413】エムスリーと【3938】LINEが共同で「LINEヘルスケア」を設立など、遠隔医療に力を入れる企業の動きが続々と見られます。
また、厚生労働省は2018年4月の診療報酬改定で「オンライン診療料」や「オンライン医学管理料」を新設し、総務省は遠隔医療に5Gの「優先制御」を割り当てるなど、政府は遠隔医療を積極推進する姿勢を示しています。
政府が遠隔医療を積極推進する背景には、2025年までに在宅医療を充実させたい狙いがあることから、遠隔医療関連銘柄は長期的に買われるテーマになる可能性もあります。
ただ、5G元年となる2019年は、5G実用化の最右翼であることから遠隔医療関連銘柄は短期で買われるテーマ株となる可能性も。
以上のことから、遠隔医療に関するニュースや関連銘柄の動向は要チェックです。
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