- 2019-3-22
- 医療
日本では、65歳以上の人口割合が全人口の20%を超えており、「超高齢社会」に突入しています。
高齢者の方々の暮らしを支える仕組みの整備は、最重要政策の1つと言えるでしょう。
特に懸念されているのが医療分野です。
医療費の増大をどう賄うのか、あるいは地方暮らしのお年寄りが医療を受けるためにどうすれば良いのか、といった課題が山積しています。
そうした状況への有効策として期待を集めているのが「遠隔医療」です。
今回は「遠隔医療」に関連する企業を取り上げ、株価動向やその背景について分かり易くご紹介したいと思います。
目次
1.「遠隔医療」関連銘柄に期待
「遠隔医療」関連銘柄とは、遠隔医療の浸透・拡大によって恩恵を享受する企業を指します。
1-1.「遠隔医療」関連銘柄とは?
遠隔医療には大きく分けて医療分野と非医療分野の2つに分けられます。
医療分野
医療分野における「遠隔医療」についても、DtoP(Doctor to Patient(医者から患者))とDtoD(Doctor to Doctor(医師から医者))に分けられます。
DtoPは、文字通りオンラインで医師が患者の診断を行うことです。
DtoDは、対面で患者を診断している医師がオンラインでより専門性の高い医師に相談することを指します。
非医療分野
非医療分野の「遠隔医療」と言うと違和感を持たれるかも知れませんが、例えば医師にオンラインで健康状態に関する相談を行ったり、あるいはヘルスチェック機能を持つスマホなどの情報をもとに健康状態を診断したりするサービスなどがこれに当ります。
以上の内容を踏まえると、遠隔医療はオンラインでのコミュニケーションを可能にする通信サービスの他、コミュニケーションツール、健康診断ツールなどを提供している企業が、「遠隔医療」関連銘柄と言えるでしょう。
こうした企業が株式市場において注目されている理由について、ご紹介していきたいと思います。
1-2.なぜ「遠隔医療」関連銘柄は株価が上昇するのか?
「遠隔医療」関連銘柄が株式市場で注目されている理由は、高齢化を背景とする中長期的な市場規模の拡大です。
矢野経済研究所によると、国内における遠隔医療の市場規模は2015年時点で122億円程度となっています。
これが2019年時点では200億円にまで拡大する予測が示されています。
遠隔医療市場が拡大する要因は主に2つです。
1つは特定地域による医師不足です。
厚生労働省によると、2008年度以降医学部の定員を増員したことによって、医師の総数は増加傾向にあります。
一方で、地域間での医師数に大きな偏りが発生している問題が顕在化しています。
特に、過疎地域においては医師数の減少が顕著です。
過疎地域には多くの高齢者が暮らしていますから、必要とする人々に十分な医療サービスが提供されない状態にあります。
こうした状況に対し、遠隔医療の導入が議論されているのです。
市場拡大のもう1つの要因が、医療費の増大です。
遠隔医療が充実してくることによって、入院を前提とする治療などが不要になる可能性があるのです。
これは、暮らし馴れた自宅で過ごす事が出来る点で患者側にもメリットと言えるでしょう。
これら2つを背景として、中長期的に遠隔医療市場の増加が見込まれており株式市場からも高い注目を集めているのです。
- 「遠隔医療」関連銘柄とは、遠隔医療の浸透・拡大によって恩恵を享受する企業を指す
- 医師不足や医療費増大を背景に遠隔医療市場は拡大が期待されている
2.「遠隔医療」関連銘柄の推移
過去に上昇した関連銘柄と、その上昇理由を見ていきましょう。
2-1.遠隔医療分野への新規参入リリースから株価が上昇
【3938】LINEは最近になって注目された「遠隔医療」関連の銘柄の1つです。
ご存知の通り、同社はスマホ向けコミュニケーションアプリ「LINE」を運営する企業です。
最近では音楽分野や決済分野などにも進出しており、業務領域を拡大しています。
同社の最大の強みは、コミュニケーションアプリ「LINE」で構築したユーザー数です。
国内月間アクティブユーザー数は7,000万人を超えるとも言われており、FacebookやTwitterをも超える顧客基盤を抱えています。
そんな同社が今年の年初に発表したのが、【2413】エムスリーとオンライン医療事業を目的として共同出資の新会社を設立するというリリースでした。
1月8日に発表された後、同社の株価は2日間で4.5%と大きく上昇しました。
エムスリーは医療分野で既にサービス提供の実績を有しており、かつ業績が順調に拡大している優良企業です。
そのような企業がパートナーであれば、新規参入分野であっても成功可能性が高い印象を持ちやすいと言えるでしょう。
株式市場では、中長期的に拡大が見込まれる遠隔医療に新規参入することを評価し、買いが集まりました。
今後共同出資会社の実績が顕在化すれば、今以上に注目度が高まるかも知れません。
2-2.遠隔医療の中心銘柄として株価が反応
2つ目にご紹介したいのが、【4593】メドピアです。
同社は、医師専用のコミュニティサイト「MedPeer」を運営しています。
「MedPeer」は、国内医師の3人に1人が参加する国内最大級のサイトです。
そこでは医薬品などの専門的な情報に加え、日常生活やキャリアなどについてもコミュニケーションが取られています。
そんな同社が遠隔医療分野として展開しているのは「first call」です。
チャットやテレビ電話を使ってオンラインで医師に医療相談を行うことが出来る医療相談サービスです。
既に小児科や産婦人科、精神科、内科などをカバーしており、もはや「遠隔医療」関連銘柄の中心的存在と言えるかも知れません。
同社は2017年秋以降に注目度を高め、株価は4倍程度とかなり大きく上昇しており、株式市場から遠隔医療分野への期待度の高さがうかがえます。
同社に限らず遠隔医療分野に関連する銘柄は、今後株価が大きく上昇する可能性を踏まえ注目してみると面白いでしょう。
- 遠隔医療分野に新規参入を発表した企業は注目されやすい
- 遠隔医療分野で既にサービスを展開している企業は株価が大きく上昇する可能性がある
3.「遠隔医療」関連銘柄
銘柄 | 備考 |
【3939】カナミックネットワーク | 地域包括ケアを推進する医療・介護情報共有システムを提供している。現在遠隔医療・介護に関する研究開発を進めている。 |
【3694】オプティム | 農業・医療・水産・製造業など幅広い分野に対しIoTプラットフォームサービスを提供。佐賀大学と遠隔医療について共同研究を進めている。 |
【9735】セコム | ホームセキュリティ業界で国内トップクラスの企業。将来の超高齢社会を見据えた遠隔医療の研究開発を進めている。 |
【4770】図研エルミック | 車載ネットワーク向けやFA製品などを供給するシステム開発会社。遠隔医療分野に関する研究開発を進めている。 |
【7587】PALTEK | 半導体や電子部品を取り扱う専門商社。顧客への提案活動を強化しており、遠隔医療含めた映像配信システムの提供に注力中。 |
【4596】窪田製薬ホールディングス | 眼疾患分野を領域とする製薬企業。在宅・遠隔医療分野において医療モニタリングデバイスの研究開発を進めている。 |
【6034】MRT | 医師・非常勤医師に特化した人材紹介サービスを手掛ける。オンライン診療「ポケットドクター」を運営。 |
【7744】ノーリツ鋼機 | マーキングペン先の製造企業から、現在では医療・ヘルスケア分野にまで領域を拡大。子会社のドクターネットで遠隔診断サービスを提供。 |
【2413】エムスリー | 「MR君」など医療関係者向けの情報プラットフォームを提供。オンライン診断のプラットフォーム構築を目的にLINEと共同出資企業を設立。 |
【3938】LINE | スマホ向けSNSアプリ「LINE」を運営する企業。オンライン診断のプラットフォーム構築を目的にエムスリーと共同出資企業を設立。 |
4.おすすめ「遠隔医療」関連銘柄
最後に、注目すべき「遠隔医療」関連銘柄を紹介します。
4-1.【6340】澁谷工業
市場 | 東証一部 |
業種 | 機械業 |
単位 | 100株 |
比較される銘柄 | トムソン、住友重機械工業、東芝機械 |
企業概要 | 飲料などの液体充填システム(ボトリングシステム)を製造・販売している企業です。 |
既存技術を用いて細胞培養・細胞調製システムを設計・製作しており、再生医療文脈で注目される可能性。
4-2.【4748】構造計画研究所
市場 | JASDAQ |
業種 | 情報・通信業 |
単位 | 100株 |
比較される銘柄 | 日本アジアG、エコモット、ULSグループ |
企業概要 | 建設分野や情報通信分野での構造設計を手掛ける企業です。 |
再生医療分野でのシミュレーションなど新規分野として注力しており、注目される可能性。
- 再生医療分野のイメージが薄い企業は、ニュースなどで一気に注目される可能性が高い
- 新規事業として今後再生医療分野での収益化が期待される銘柄は注目されやすい
5.まとめ
今後益々高齢者の割合が高まっていくことが予想される日本。
医療分野での様々な課題は早急に手を打たなければなりません。
そうした状況下で期待が集まる遠隔医療。
ICT技術の進展によって、今後は遠隔医療の幅や深さが一層向上していくことが期待出来るでしょう。
この動きに伴って、医療現場における遠隔医療の存在感が高まっていくことが想定されます。
現段階では研究開発分野に留まっている企業でも、「遠隔医療」関連銘柄として将来大きな収益を稼ぐ可能性があります。
長い目線で、「遠隔医療」関連銘柄に投資をしてみてはいかがでしょうか。
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