- 2021-9-30
- 天然素材
電気自動車やスマートフォン等の小型デジタル機器に内蔵されているリチウムイオン電池。
そのリチウムイオン電池の需要が世界的に増大し、リチウムイオン電池の正極材である「コバルト」の需要も飛躍的に拡大。
採掘企業との契約が激戦化しており、コバルト価格が2年足らずで4倍にまで上昇しました。
それに伴い、コバルト関連銘柄である【4080】田中化学研究所の株価が僅か3ヶ月で3.4倍!
【5713】住友金属鉱山や【5724】アサカ理研も株価2倍にまで上昇するなど、コバルト関連銘柄に対する期待度が高まっています。
今回は今注目すべきコバルト関連銘柄と、これまで上昇してきた理由を分かりやすく取り上げていきます。
目次
1.世界中でコバルトの需要が拡大している!
コバルトとは何か、今注目のセクターと併せて見ていきましょう。
1-1.コバルトとは
コバルトは金属元素の一つで、単体金属としての用途はほとんどありません。
しかし合金の成分として「高速度鋼」「耐熱鋼」の特徴をもっており、永久磁石などに利用されています。
携帯電話やスマートフォンなど小型デジタル機器にも使用されており、株式市場では主に化合物半導体や磁石の材料として取り上げられることが多いです。
航空宇宙及び工業生産部門などから強い需要があり、少なくとも2026年までコバルトの需要の安定化が期待されています。
1-2.電気自動車の普及がコバルトの需要を増大させる
現在コバルトが注目されている一番の理由は世界的な電気自動車化が原因です。
近年では世界的に電気自動車化が進み、その動力源であるリチウムイオン電池の需要が飛躍的に増大。
それと同時にリチウムイオン電池の正極材であるコバルトの需要も同様にひっ迫しました。
世界中の自動車メーカーやリチウムイオン電池製造企業などが一斉に発掘会社と独占契約を結ぼうとし、業界内での競争が激化しています。
リチウムの価格が約2年間で3倍強まで上昇しているのに対し、コバルトは同期間で約4倍を超える水準にまで高騰しました。
この高騰劇は株式市場にも大きな影響を与え、コバルト関連銘柄の殆どに買いが集中。
元々コバルト関連の銘柄が少ないこともあり、セクターの殆どが全面高となりました。
1-2.世界的なEVシフトを受けて、EV電池に不可欠なコバルト価格が急上昇
コバルト価格は、2020年12月末には約33,000ドル/トンを付けていましたが、2021年に入ってから上昇しており、2021年9月22日時点では53,380ドル/トンまで上がっています。
※出典:TRADING ECONOMICS
コバルト価格上昇の背景にあるのは、EV向け需要が急増していることに加えて、中国が備蓄を進めていることも一因とされています。
長期で見てみると、コバルト価格は2018年3月に約94,000ドル/トンまで急騰していたことから、まだ上昇余地は十分にあります。
前回コバルト価格が急騰した2016年~2018年に掛けてもEV需要が期待されたことが背景にありましたが、2018年3月以降は暴落となりました。
ただ今回は世界的なEVシフトというファンダメンタルに裏付けられていることから、コバルト価格は本格的な上昇となっていってもおかしくはありません。
- コバルトは小型デジタル機器やリチウムイオン電池の正極材として使用されている。
- 世界規模で電気自動車化が進めば進むほどコバルトの需要も増大していく。
2.コバルト関連銘柄の株価動向について
コバルト関連銘柄の株価動向を見ていきましょう。
なおコバルト価格は2020年12月末に付けていた約33,000ドル/トンから、2021年9月時点では53,380ドル/トンまで、約+61%上昇しています。
2-1.EV向け電池を手掛ける!【4080】田中化学研究所
ニッケル電池やリチウムイオン電池の正極材料を手掛ける【4080】田中化学研究所は、コバルト関連銘柄にも位置付けられる電池材料株です。
同社は水酸化ニッケルの表面にコバルトを被覆したニッケル水素電池用正極材料も手掛けています。
また同社はコバルト価格が高騰した2017年から2018年に掛けて、コバルト価格にリンクするように株価が高騰しました。
2021年の同社の株価は、2021年1月末に付けていた1,160円から、4月22日には1,695円まで買われました。
しかしその後は下落しており、2021年9月時点では950円前後で推移しています。
同社は代表的なEV関連株ではありますが、あくまでEVに関連するのであり、コバルト価格に影響されるわけではありません。
2-2.リチウムイオン電池からコバルトリサイクル!【7456】松田産業
貴金属リサイクルを手掛ける【7456】松田産業は、代表的な都市鉱山株であり、コバルト関連銘柄に位置付けられます。
同社は【5233】太平洋セメントと共同で、使用済みリチウムイオン電池からコバルトをリサイクルする技術を手掛けていることで知られています。
同社の株価は2021年1月初めには1,815円を付けていましたが、2021年に入ってから上昇を続けており、9月14日には3,205円まで上昇。
2021年に入ってから+76%の最大上昇率となっています。
ただ、2021年は、コバルト以外のレアメタルやレアアース、金やプラチナといった多くの金属価格も上昇していることから、「コバルト価格が上昇したから買われた」と一概に言うことはできません。
- 「コバルト価格が上昇したから買われた」とは一概には言えないが、EV電池を手掛ける銘柄やコバルトなどのレアメタルを手掛けるコバルト関連銘柄には、2021年に入ってから上昇が見られる。
3.主要のコバルト関連銘柄
銘柄 | 株値 | 備考 |
【4080】田中化学研究所 | 1,155円 | 二次電池材の大手企業。同社は政局材に使うコバルトやニッケルナなどの金属を硫酸で溶かす加工工場を2017年に新設している。 |
【4092】日本化学工業 | 4,880円 | 日本の無機化学で首位級の化学メーカー。リチウムイオン二次電池用の正極活物質としてコバルト酸リチウムを製造及び販売をしている。 |
【4107】伊勢化学工業 | 3,020円 | 旭硝子子会社の専門化学メーカーで、ヨウ素生産量で国内トップ。コバルト系の金属化合物を手掛けている。 |
【5233】太平洋セメント | 3,565円 | セメント企業最大手。コバルトなどの有用資源を省エネ・低コストでリサイクルできる構築技術を開発している。 |
【5713】住友金属鉱山 | 4,108円 | 電子材料と非鉄金属が両輪、ニッケルにも強みを持つ企業。鋼やコバルトなどレアメタル市況との株価連動性が高い。 |
【5724】アサカ理研 | 2,176円 | 貴金属の回収や洗浄、リサイクルを行う企業。都市高山などからコバルトなどの希少金属を回収精製するリサイクル業務を展開。 |
【5857】アサヒホールディングス | 2,049円 | 貴金属のリサイクルと廃棄物処理が2本柱。都市高山から希少金属の回収事業も注力している。 |
【7456】松田産業 | 1,600円 | 貴金属リサイクル業務が主体。使用済みリチウムイオン電池からコバルトなどの金属資源を回収するリサイクル技術システムを開発。 |
【8031】三井物産 | 1,871円 | 総合商社の名門で鉄鉱石、原油の生産権益量で業界首位。非鉄金属などの安定供給と総合リサイクル事業を推進。 |
【8053】住友商事 | 1,837.5円 | 住友グループの大手総合商社。金属取引などに強みがあり、ニッケル・コバルト開発プロジェクト「アドバトビー」を展開。 |
4.おすすめコバルト関連銘柄
コバルトに関する企業で、これから注目すべき銘柄をピックアップします。
4-1.【5724】アサカ理研
市場 | ジャスダック |
業種 | 非鉄金属 |
単位 | 100株 |
比較される銘柄 | 松田産業、アサヒホールディングス、中外鉱業 |
注目ポイント | コバルトを低コストでリチウムイオン電池から回収する技術を持つ。 |
福島県に本社を置く貴金属回収や洗浄、リサイクル事業を手掛けている同社。
世界的なコバルト不足が問題視されているなかで、低コストでリチウムイオン電池からコバルトを回収する同社独自の技術は要注目です。
4-2.【5857】アサヒホールディングス
市場 | 東証一部 |
業種 | 非鉄金属 |
単位 | 100株 |
比較される銘柄 | 松田産業、アサカ理研、住友金属鉱山 |
注目ポイント | 都市高山から希少金属の回収事業も注力しており注目度が高い |
都市高山から希少金属の回収事業も注力している同社。
想定以上の貴金属リサイクル回収量や、貴金属価格が上昇した際は営業利益を予定よりも上回ったこともあります。
4-3.【5713】住友金属鉱山
市場 | 東証一部 |
業種 | 非鉄金属 |
単位 | 100株 |
比較される銘柄 | 三井金属、DOWA、三菱マテリアル |
注目ポイント | 非鉄・レアメタル市況などのコバルト関連銘柄の中でも特に株価連動性が高い |
電子材料と非鉄金属が両輪で、ニッケルにも強みを持つ同社。
先端材料の開発を手掛けており、住友発展の基礎となった世界有数の菱刈鉱山を経営しています。
車載用電池を回収して正極材の調達などを手掛けており、非鉄・レアメタル市況などのコバルト関連銘柄の中でも特に株価連動性が高い銘柄です。
4-4.【7456】松田産業
市場 | 東証一部 |
業種 | 卸売業 |
単位 | 100株 |
比較される銘柄 | アサヒホールディングス、アサカ理研、中外鉱業 |
注目ポイント | 独自のリサイクル技術・システム開発と原料回収ネットワークに強み |
金などの貴金属リサイクルが主体の同社。
使用済みのリチウムイオン電池からコバルトなどの金属資源を回収するリサイクル技術を開発しており、貴金属リサイクルシステムや原料回収ネットワークに強みを持ちます。
コバルト関連銘柄としての注目度は高いと言えます。
5.まとめ
電気自動車化が進む中、動力源であるコバルトが不足しているため、コバルト価格は現在も上昇傾向にあります。
そのためApple社がサプライヤーに頼らず、採掘企業から直接供給を受ける見通しがあると発表しました。
また日本近海からもコバルトの採掘ポイントを発見したと公表。
今後は日本近海のコバルト開発に注目される可能性は高く、関連銘柄への物色は続くと見ています。
コバルト関連銘柄は少ないので、まずは業績の良い企業を中心に注目しておきましょう。
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