- 2020-11-27
- 電池
2020年代半ばの実用化が見込まれる「全固体電池」
ポストリチウムイオン電池とされる全固体電池は優れた特性から、世界中でその開発が加速しています。
特に、日本企業は全固体電池開発で一歩リードしていることからも、関連企業の動向はチェックすべきです。
そんな全固体電池に関して、基本情報から注目銘柄まで取り上げてみましたので是非チェックしておきましょう。
目次
1.全固体電池とは
現在主流のリチウムイオン電池と全固体電池は何が違うのでしょうか?
1-1.全てが固体化した全固体電池
現在主力となっているリチウムイオン電池などには、液体の電解質が入っています。
その電解質の中をイオンが動く事で電流が発生しますが、その全てを固体化した電池が全固体電池です。
- 無機系固体電解質
- 液漏れの心配がない
- 発火、爆発の可能性がない
- 安全性が大幅に向上
無機系固体電解質なので液漏れの心配がなく、発火、爆発の可能性もないので安全性が向上します。
- 高い出力特性を持つ
- 高エネルギー
- 充電が早い
- コンパクト化も実現可能
- マイナス30℃の低温や100℃の高温にも耐える
全固体電池は高い出力特性を持ち、高エネルギー、更に充電が速い特徴があります。
また、マイナス30℃の低温や100℃の高温でも安定して充放電が可能で、コンパクト化もできます。
1-2.リチウムイオン電池と全固体電池の違い
スマホやEV(電気自動車)などの需要拡大で、現在主流になっているのはリチウムイオン二次電池ですが、全固体電池の開発によりその主流が変わるかもしれません。
基本的に電池は正極と負極があり、その間にはイオンが流れる電解質で構成されています。
リチウムイオン電池に利用されている電解質は、可燃性の有機溶媒液が使われているため、液漏れ、発火など安全面での課題があります。
それに比べ、全固体電池は電解質が固体であることで液漏れを起こさず発火しにくい利点があります。
また、低温や高温での特性でも違いがあり、リチウムイオン電池は70度が上限とされていますが、全固体電池なら100度の高温でも充放電が可能。
低温化でも違いがあり、マイナス30度では十分に性能が発揮しないリチウムイオン電池に比べて、全固体電池はマイナス30度でも性能を発揮。
安全面や過酷な環境化でも優れた特性を持つ全固体電池ですが、リチウムイオン電池より多くの電気を貯める事や、長寿命といった期待もあります。
スマホやEVといった需要に対して、全固体電池はリチウムイオン電池と比べても安全性が高く高性能の蓄電池となるので、その実用化が期待されています。
▼リチウムイオン電池に関して詳しくはこちら
【ノーベル賞候補のリチウムイオン電池はやはり凄い!関連銘柄を抑える】
1-3.世界的な脱ガソリン・EVシフトのニュースが止まらない
2020年10月から11月に掛けて、世界各国がガソリン車の新車販売規制を発表しています。
イギリスでは2030年までに、フランスでは2040年までに、中国では2035年までに、アメリカ・カリフォルニア州では2035年までに、カナダ・ケベック州では2035年までに、それぞれガソリン車の新車販売規制を行うと発表されています。
世界的なEVシフトを受けて、日本政府の対応はもちろん、EVで出遅れている日本の自動車メーカーの対応にも注目が集まりますが、EV逆転の切り札となる全固体電池には大きな期待が集まります。
全固体電池の研究開発は進んでおり、2020年11月16日には、静岡大学と東京工業大学の研究グループが全固体電池の電解質に活用できる有機分子結晶を開発したと発表しました。
この電解質は従来の技術に比べて低温で動作しやすいのが特徴で、冬季の最低気温がゼロ度以下になる寒冷地用のEVに応用できる可能性があるとのことです。
全固体電池関連銘柄は、自動車セクターが不調だったことから2020年は苦しい値動きとなっていましたが、EVシフトに関するニュースが相次いだ2020年11月には大反発の動きが出てきています。
- 全てを固体化した全固体電池は安全性が高く高性能の蓄電池
- 全固体電池はリチウムイオン電池と比べると優れた点が多い
2.世界でEV(電気自動車)シフトの流れ
現在世界では、自動車がEVへと流れが大きく変わってきました。世界規模の変化から全固体電池の需要が見込めます。
2-1.世界的にEVが拡大し全固体電池への期待が高まる
今、世界ではディーゼル、ガソリン自動車からEV(電気自動車)へシフトの流れが広がっています。
その理由として、地球温暖化対策として「パリ協定」が発効するなど、世界各国の地球温暖化対策意識にあります。
世界各国の自動車燃費規制も厳しさを増し、欧州では2021年に最も厳しい燃費規制が導入されます。また、フランスやイギリスがは2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止すると発表。
自動車大国のドイツも、ガソリン車とディーゼル車の新規販売禁止に踏み切る意向を示唆しています。
米国ではZEV規制の内容を強化。中国でもNEV規制を2018年から実施。
世界的にこのような自動車の燃費規制や、ZEV規制といった規制が敷かれたことで、自動車市場がEV(電気自動車)へシフトしています。
※ZEV規制=一定量の排ガスゼロ車導入を義務化
今後世界的にEV(電気自動車)が急増するとなれば、現在主流のリチウムイオン電池より優れるとされた全固体電池は、大きな魅力を秘めています。
▼EV(電気自動車)に関してはこちらをご覧下さい
【EV(電気自動車)関連銘柄の本命は?合わせて急速充電器関連も注目!】
2-2.2020年は全固体電池の材料に期待!
トヨタ自動車が開発を進めている全固体電池は、株式投資サイトなどでは人気テーマとなっているものの、全固体電池開発に関するニュースはほとんど流れてきていませんでした。
トヨタ自動車は全固体電池を2020年前半までに商用化する計画としており、2020年には全固体電池に関するニュースが続々と発表されることが期待されます。
2020年1月に開催された「オートモーティブワールド2020」では、トヨタが全固体電池の開発状況を明らかにしました。
まだ実用化に向けては課題も多いものの、新素材で作った全固体電池は、従来型のリチウムイオン電池に比べて3倍の電流が流れることが確認され、-30度や100度といった厳しい条件下でも充放電できることも確認されたとのことです。
またトヨタのEV(電気自動車)事業も着々と進んでいます。
2020年4月からはトヨタ自動車とパナソニックの合弁会社「プライム プラネット エナジー&ソリューションズ株式会社」が本格始動し、車載用のリチウムイオン電池に加えて、全固体電池の開発・製造・販売を手掛けていくとのことです。
- 世界的にEVへシフトしている流れから、優れた特性の全固体電池へ期待
3.上昇した全固体電池関連銘柄の上昇した銘柄とその理由
全固体電池関連銘柄の動向を抑えておきましょう。
3-1.世界的なEVシフトで急騰!【6955】FDK
富士通系の電池メーカー【6955】FDKは、代表的な全固体電池関連銘柄として注目されています。
同社は、SMD(表面実装)型小型全固体電池「SoLiCell」を2020年内に量産開始すると報じられています。
この全固体電池は高温や真空といった高耐久性が求められる環境下でも利用できる性質を持つとのことです。
同社の株価は、2020年新型コロナ相場では苦戦していました。2020年年初には909円を付けていましたが、コロナショックでは3月23日に386円まで大暴落。
その後は反発したものの1,000円以上までは買われず、年初に付けていた株価前後で推移していました。
ところが、世界的なEVシフトの影響を受けてか、11月20日に突然のストップ高に。
11月19日の終値1,028円から3営業日後の11月25日には1,450円へと、わずか3日で+41%の急騰となっています。
3-2.21年ぶりに上場来高値を更新!【6981】村田製作所
世界的電子部品メーカーの【6981】村田製作所は、全固体電池関連銘柄としても注目の銘柄です。
同社は、2021年初めに全固体電池を量産する体制に入ったと報道されています。
同社の株価は、コロナショックでは2020年3月17日に4,602円まで下げましたが、その後は戻しています。
特にEVシフトのニュースが相次いだ2020年11月には一直線の上昇トレンドとなっており、11月25日には8,787円まで上昇。
1999年12月に付けた上場来高値を21年ぶりに更新しました。
同社の全固体電池事業は未知数ではあるものの、EVシフトや全固体電池への投資家の期待は本物だと言えます。
全固体電池関連銘柄などのEV系テーマ株は2020年に停滞していましたが、世界的なEVシフトの流れを受けて2020年11月に大きな資金が流入してきました。
この流れが長期化していくかどうかに注目です。
4.すすめの全固体電池関連銘柄3選
注目の全固体電池関連銘柄を厳選
4-1.【7203】トヨタ自動車
市場 | 東証一部 |
業種 | 輸送用機器 |
単位 | 100株 |
比較される銘柄 | ホンダ、日産自動車、デンソー |
注目ポイント | 2020年代前半までに全固体電池の実用化を掲げるリーディングカンパニー |
トヨタ自動車は、全固体電池の関連特許数で世界一を誇っている全固体電池のリーディングカンパニーです。
日本最大の時価総額を誇る企業であるため、全固体電池に関するニュースで株価が大きく動くとは考えられませんが、全固体電池の動向を握っている企業であるため注目しておきましょう。
4-2.【6955】FDK
市場 | 東証2部 |
業種 | 電気機器 |
単位 | 100株 |
比較される銘柄 | TDK、GSユアサ、古河電池 |
注目ポイント | 富士通系の電池メーカー、次世代電池開発で注目。 |
FDKは、全固体電池の開発に積極的な企業として知られています。
2019年5月には、世界最高水準のSMD対応小型全固体電池の高容量化品を開発したことを発表。
ただ、株価はこの2年間で3分の1にまで暴落しています。とはいえ、2019年に底を付けたような値動きとなっており、今後大きな反発となってもおかしくありません。
4-3.【6976】太陽誘電
市場 | 東証1部 |
業種 | 電気機器 |
単位 | 100株 |
比較される銘柄 | TDK, 村田製, 京セラ |
注目ポイント | セラミックコンデンサーやインダクターに強い大手電子部品メーカー。 |
太陽誘電は、2019年12月に全固体電池を開発したことを発表し、株式市場でも大きな話題となりました。
セラミックコンデンサーで培った技術力を応用したことで、全固体電池の小型化・大容量化を実現。
2020年度中にサンプル出荷を開始し、2021年度中に量産が始まる予定だということです。
5.まとめ
世界でEV(電気自動車)の拡大から優れた性能の全固体電池が求められています。
日本企業がリードしている全固体電池は、2022年には実用化される可能性も高いです。
そのことからも、関連企業と株価の動きには今後も注目です。
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