- 2021-8-2
- 電池
2020年代半ばの実用化が見込まれる「全固体電池」
ポストリチウムイオン電池とされる全固体電池は優れた特性から、世界中でその開発が加速しています。
特に、日本企業は全固体電池開発で一歩リードしていることからも、関連企業の動向はチェックすべきです。
そんな全固体電池に関して、基本情報から注目銘柄まで取り上げてみましたので是非チェックしておきましょう。
目次
1.全固体電池とは
現在主流のリチウムイオン電池と全固体電池は何が違うのでしょうか?
1-1.全てが固体化した全固体電池
現在主力となっているリチウムイオン電池などには、液体の電解質が入っています。
その電解質の中をイオンが動く事で電流が発生しますが、その全てを固体化した電池が全固体電池です。
- 無機系固体電解質
- 液漏れの心配がない
- 発火、爆発の可能性がない
- 安全性が大幅に向上
無機系固体電解質なので液漏れの心配がなく、発火、爆発の可能性もないので安全性が向上します。
- 高い出力特性を持つ
- 高エネルギー
- 充電が早い
- コンパクト化も実現可能
- マイナス30℃の低温や100℃の高温にも耐える
全固体電池は高い出力特性を持ち、高エネルギー、更に充電が速い特徴があります。
また、マイナス30℃の低温や100℃の高温でも安定して充放電が可能で、コンパクト化もできます。
1-2.リチウムイオン電池と全固体電池の違い
スマホやEV(電気自動車)などの需要拡大で、現在主流になっているのはリチウムイオン二次電池ですが、全固体電池の開発によりその主流が変わるかもしれません。
基本的に電池は正極と負極があり、その間にはイオンが流れる電解質で構成されています。
リチウムイオン電池に利用されている電解質は、可燃性の有機溶媒液が使われているため、液漏れ、発火など安全面での課題があります。
それに比べ、全固体電池は電解質が固体であることで液漏れを起こさず発火しにくい利点があります。
また、低温や高温での特性でも違いがあり、リチウムイオン電池は70度が上限とされていますが、全固体電池なら100度の高温でも充放電が可能。
低温化でも違いがあり、マイナス30度では十分に性能が発揮しないリチウムイオン電池に比べて、全固体電池はマイナス30度でも性能を発揮。
安全面や過酷な環境化でも優れた特性を持つ全固体電池ですが、リチウムイオン電池より多くの電気を貯める事や、長寿命といった期待もあります。
スマホやEVといった需要に対して、全固体電池はリチウムイオン電池と比べても安全性が高く高性能の蓄電池となるので、その実用化が期待されています。
▼リチウムイオン電池に関して詳しくはこちら
【ノーベル賞候補のリチウムイオン電池はやはり凄い!関連銘柄を抑える】
1-3.世界的な脱ガソリン・EVシフトのニュースが止まらない
全固体電池は、かねてから注目テーマ株となっていましたが、2020年秋から本格化した脱炭素やEVシフト以降はその動きが顕著となっています。
今後も世界中で進む脱炭素やEVシフトを背景に、全固体電池関連銘柄は注目テーマ株であり続ける可能性は高いものと見られます。
2021年7月14日には、EU(ヨーロッパ連合)が、気候変動対策として2035年までガソリン車の新車販売を事実上禁止とし、脱炭素の取り組みが不十分な国からの輸入品などに対して事実上の関税を課す「炭素国境調整税」の導入を検討することを発表しました。
日本メーカーが得意とするハイブリッド車の販売も禁止されることから、トヨタのEVの切り札と期待される全固体電池への期待がより高まることは必然です。
トヨタ自動車は、2021年内に全固体電池を使った試作車の公開を検討すると報じられています。
なおトヨタはオリンピックイベントで全固体電池車を公開するという憶測もありましたが、トヨタのオリンピック関連のイベントは全て中止となったことから、2021年秋以降に何らかの発表があるかもしれません。
全固体電池の特許数では日本がトップですが、中国や欧州勢も研究開発を加速してきています。全固体電池の開発を巡っては、今後10年単位の長い競争になっていくことは避けられないでしょう。
- 全てを固体化した全固体電池は安全性が高く高性能の蓄電池
- 全固体電池はリチウムイオン電池と比べると優れた点が多い
2.世界でEV(電気自動車)シフトの流れ
現在世界では、自動車がEVへと流れが大きく変わってきました。世界規模の変化から全固体電池の需要が見込めます。
2-1.世界的にEVが拡大し全固体電池への期待が高まる
今、世界ではディーゼル、ガソリン自動車からEV(電気自動車)へシフトの流れが広がっています。
その理由として、地球温暖化対策として「パリ協定」が発効するなど、世界各国の地球温暖化対策意識にあります。
世界各国の自動車燃費規制も厳しさを増し、欧州では2021年に最も厳しい燃費規制が導入されます。また、フランスやイギリスがは2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止すると発表。
自動車大国のドイツも、ガソリン車とディーゼル車の新規販売禁止に踏み切る意向を示唆しています。
米国ではZEV規制の内容を強化。中国でもNEV規制を2018年から実施。
世界的にこのような自動車の燃費規制や、ZEV規制といった規制が敷かれたことで、自動車市場がEV(電気自動車)へシフトしています。
※ZEV規制=一定量の排ガスゼロ車導入を義務化
今後世界的にEV(電気自動車)が急増するとなれば、現在主流のリチウムイオン電池より優れるとされた全固体電池は、大きな魅力を秘めています。
▼EV(電気自動車)に関してはこちらをご覧下さい
【EV(電気自動車)関連銘柄の本命は?合わせて急速充電器関連も注目!】
3.上昇した全固体電池関連銘柄の上昇した銘柄とその理由
全固体電池関連銘柄の動向を抑えておきましょう。
3-1.全固体電池材料で期待!【5218】オハラ
デジカメ用光学レンズなどに強みを持つ光学ガラスメーカーの【5218】オハラは、材料メーカーとして注目される全固体電池関連銘柄です。
同社が開発した「リチウムイオン伝導性ガラスセラミックス」は、車載用全固体電池の材料に使われることが期待されています。
同社はかつて2016年8月から2018年1月の1年半に掛けて、492円→4,330円まで急騰した過去がありますが、2018年以降は大きく下落していました。
同社の株価は2020年7月には944円を付けていましたが、2020年秋のEVシフトを背景に買われていき、2021年3月4日には2,115円まで上昇。
直近1年間では最大+124%の上昇率となり、およそ3年ぶりの上昇となっています。
3-2.全固体電池量産決定で買われる!【6955】FDK
富士通系の電池メーカー【6955】FDKは、新型コロナ相場で特に大きく買われた全固体電池関連銘柄です。
同社は2020年6月にSMD対応小型全固体電池「SoLiCell」を年内に量産開始することを発表し、2020年12月から全固体電池の量産を開始しています。
同社の株価は、2020年6月初めには612円を付けていましたが、上記ニュース発表を受けて2日連続ストップ高になるなど急騰。
さらに2020年秋のEVシフトでも買われ、2021年1月13日には2,073円を付けています。
この1年間で最大+238%の上昇率となっていますが、2021年1月に高値を付けてからは下落が続いており、2021年7月末時点では1,100円前後で推移しています。
4.おすすめの全固体電池関連銘柄3選
注目の全固体電池関連銘柄を厳選
4-1.【7203】トヨタ自動車
市場 | 東証一部 |
業種 | 輸送用機器 |
単位 | 100株 |
比較される銘柄 | ホンダ、日産自動車、デンソー |
注目ポイント | 2020年代前半までに全固体電池の実用化を掲げるリーディングカンパニー |
トヨタ自動車は、全固体電池の関連特許数で世界一を誇っている全固体電池のリーディングカンパニーです。
日本最大の時価総額を誇る企業であるため、全固体電池に関するニュースで株価が大きく動くとは考えられませんが、全固体電池の動向を握っている企業であるため注目しておきましょう。
4-2.【6955】FDK
市場 | 東証2部 |
業種 | 電気機器 |
単位 | 100株 |
比較される銘柄 | TDK、GSユアサ、古河電池 |
注目ポイント | 富士通系の電池メーカー、次世代電池開発で注目。 |
FDKは、全固体電池の開発に積極的な企業として知られています。
2019年5月には、世界最高水準のSMD対応小型全固体電池の高容量化品を開発したことを発表。
ただ、株価はこの2年間で3分の1にまで暴落しています。とはいえ、2019年に底を付けたような値動きとなっており、今後大きな反発となってもおかしくありません。
4-3.【6976】太陽誘電
市場 | 東証1部 |
業種 | 電気機器 |
単位 | 100株 |
比較される銘柄 | TDK, 村田製, 京セラ |
注目ポイント | セラミックコンデンサーやインダクターに強い大手電子部品メーカー。 |
太陽誘電は、2019年12月に全固体電池を開発したことを発表し、株式市場でも大きな話題となりました。
セラミックコンデンサーで培った技術力を応用したことで、全固体電池の小型化・大容量化を実現。
2020年度中にサンプル出荷を開始し、2021年度中に量産が始まる予定だということです。
5.まとめ
世界でEV(電気自動車)の拡大から優れた性能の全固体電池が求められています。
日本企業がリードしている全固体電池は、2022年には実用化される可能性も高いです。
そのことからも、関連企業と株価の動きには今後も注目です。
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