- 2019-5-13
- 電池
電気自動車を中心に環境負荷軽減が大きな潮流となりつつある自動車業界。
その実現に向けて近年目覚ましい発展を遂げているのが電池分野でしょう。
リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高くかつ大きな出力を実現しました。
そして、リチウムイオン電池を更に上回る高効率の電池として登場したのが、「空気電池」です。
空気中の酸素を活用し、電極材を不要とする空気電池は、次世代電池として各企業が研究開発に取り組んでいます。
株式市場でも将来性の高さから大きな注目を集めているのです。
今回は「空気電池」に関連する企業を取り上げ、株価動向やその背景について分かり易くご紹介したいと思います。
目次
1.空気電池とは?
「空気電池」とは、空気中の酸素を活用した電池のことを指します。
通常の電池の場合、プラス電極とマイナス電極を電子が移動することによって電力が発生します。
電極には金属を始めとして様々な材料が用いられてきました。
一方空気電池は、電極の1つが空気です。
大気中の酸素を電極として用いることで、様々なメリットが生まれます。
例えば重量です。
金属を用いた電極に比べ、空気を用いていますから圧倒的に軽くなります。
そのため重量当たりの出力が大きくなるため、高効率な電池と言えるでしょう。
また、金属と異なり調達のための多くの手間が不要になります。
鉱山から金属の採掘・加工・運送などのフローを短縮することが出来るのです。
さらには、環境面への負荷も軽減されます。
電極に用いられる金属は有限であり、近年話題になったリチウムイオン電池では希少性の高い金属を用いて作られています。
一方、空気電池の場合はそうした懸念も極めて小さいでしょう。
まさに最先端の電池なのです。
現状は研究開発段階の企業が多いですが、上記のメリットを踏まえれば今後飛躍的に普及する可能性があるでしょう。
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空気電池とは、空気中の酸素を活用した電池のことを指す
- 様々なメリットが期待出来る最先端の電池
2.「空気電池」関連銘柄が上昇する理由は?
「空気電池」関連銘柄が株式市場で注目されている理由は、大きく分けて2つあります。
2-1.事業機会拡大
先程もご説明した通り、空気電池には様々なメリットがあります。
今後自動車や電気機器などへの導入が進んでいく可能性が高いでしょう。
特に自動車分野では、エコカーへの潮流が益々強まっています。
高効率かつ環境負荷が小さい空気電池は、エコカーにとっては必須アイテムと言えるでしょう。
こうした期待感から株価が変化した銘柄の1つが、【6955】FDKです。
同社は富士通の連結子会社で、電池以外にも電子部品・モジュールや蓄電システム、電源システムを供給している企業です。
そんな同社が注目を集めたのが、2019年3月18日の新聞記事でした。
日経新聞において、水素を使う特殊なタイプの空気電池について3年後の実用化にめどをつけた、と報じられたのです。
既に空気電池は株式市場では高い期待を集めるテーマですから、この報道をきっかけに株価は一時ストップ高となりました。
空気電池はまだ研究開発段階の企業が多いですから、「実用化にめど」という言葉は強い印象を残したと言えるでしょう。
空気電池関連の報道で企業名が登場すると、株式市場からの注目が一気に高まる可能性が高いのです。
2-2.過去に新型電池として注目された銘柄
空気電池の文脈ではありませんが、「新型電池」銘柄として過去株価が大きく変化したのが【6937】古川電池です。
同社は自動車・二輪車用のバッテリーを中心に、防災用電池や産業用蓄電池などを手掛けている企業です。
同社が注目されたのは、2017年7月頃です。
当時株式市場では、「新型電池」としてリチウムイオン電池に大きな期待が集まっていました。
同社は金星探査機「あかつき」に搭載されるリチウムイオン電池を供給した実績から、リチウムイオン電池関連銘柄として認識され始めていました。
そんな中、自動車業界でガソリンからEVへのシフトが本格化したのです。
その後3ヶ月間で同社の株価は+70%程度と大幅に上昇しました。
業界の潮流と同社の強みが上手く噛み合ったことが大きな変化を生み出したと言えるでしょう。
そして今後、空気電池関連銘柄として同様の動きが生まれる可能性があります。
実は同社は既にマグネシウム空気電池を製品として販売しています。
同社のHPによれば、同製品は水を入れるだけで充電可能であり、紙製容器の電池です。
主には非常用・防災用として販売されている製品ですが、既に空気電池を製品化まで実現している点は大きな特長です。
今後の株価動向に注目しておくと良いかもしれません。
- 空気電池開発に関する報道によって大きく株価が変化する
- 過去リチウムイオン電池関連銘柄として上昇した企業が再注目される可能性がある
3.「空気電池」関連銘柄リスト
銘柄 | 備考 |
【8242】藤倉コンポジット | 住宅機器向けの部材や電材などを手掛ける企業。空気電池の技術を利用した電池関連製品の研究開発を進めている。 |
【6955】FDK | 電池を中心に、電子部品や蓄電システムなどを手掛ける企業。主力の電池事業において、空気電池の開発に取り組む。 |
【6937】古河電池 | カーバッテリーやオートバイバッテリーを始め、産業用蓄電池も手掛ける。マグネシウム空気電池の研究に取り組む。 |
【7911】凸版印刷 | 国内印刷業界の代表的な企業である一方で、セキュリティシステムなどを手掛ける。古河電池と空気電池を共同開発する。 |
【6752】パナソニック | 家電製品国内トップクラスの企業。産業向けでは自動車向け電池などを供給する。トヨタ自動車と電池分野の協業。 |
【7203】トヨタ自動車 | グローバルでトップクラスの自動車メーカー。空気電池搭載の自動車登場によって恩恵を享受する可能性がある。 |
【7267】本田技研工業 | 国内トップクラスの自動車メーカー。二輪車でも競争力高い。空気電池搭載の自動車登場によって恩恵を享受する可能性がある。 |
【7201】日産自動車 | 国内トップクラスの自動車メーカー。三菱自動車がグループ企業。空気電池搭載の自動車登場によって恩恵を享受する可能性がある。 |
【7261】マツダ | 国内で高い知名度を誇る自動車メーカー。トヨタ自動車と提携。空気電池搭載の自動車登場によって恩恵を享受する可能性がある。 |
4.おすすめ「空気電池」関連銘柄
4-1.【6981】村田製作所
市場 | 東証一部 |
業種 | 電気機器業 |
単位 | 100株 |
比較される銘柄 | TDK、京セラ、太陽誘電 |
企業概要 | コンデンサでトップクラス。二次電池も手掛ける企業 |
空気電池への期待から二次電池事業者として連想買いされる可能性がある。
4-2.【6674】ジーエス・ユアサ コーポレーション
市場 | 東証一部 |
業種 | 電気機器業 |
単位 | 100株 |
比較される銘柄 | パナソニック、日立、富士電機 |
企業概要 | 自動車や二輪車用のバッテリー・充電器を製造する企業 |
電池メーカーとして、空気電池関連銘柄として注目が集まる可能性。
4-2.【5706】三井金属鉱業
市場 | 東証一部 |
業種 | 非鉄金属業 |
単位 | 100株 |
比較される銘柄 | 住友鉱、DOWA、三菱マ |
企業概要 | エレクトロ製品や自動車部品向けの材料を供給する企業 |
電池材料を供給しており、空気電池関連銘柄として注目が集まる可能性
- 二次電池メーカーは、空気電池関連銘柄として注目が集まる可能性が高い
- ・電池向け材料メーカーは、空気電池関連銘柄として注目が集まる可能性が高い
5.まとめ
次世代電池として高い注目を集める「空気電池」。
まだまだ本格的に参入できている企業は少なく、市場としては未成熟と言えるでしょう。
一方で将来性は非常に大きい分野です。
自動車向けを始め、電子機器など様々な分野での活用が期待できます。
現在は研究開発段階かも知れませんが、今後様々な企業が参入し、「空気電池」関連銘柄となるでしょう。
そういった意味では、将来の「空気電池」関連銘柄を今から発掘しておくことが重要です。
そのためには、各社の有価証券報告書内に記載のある研究開発分野について確認すると良いかもしれません。
骨の折れる作業かも知れませんが、将来の大きなリターン獲得に向けて「空気電池」関連銘柄に注目しては如何でしょうか。
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