- 2020-2-4
- 国策
日本は自然災害が数多く発生する「災害大国」です。
地震対策や津波対策など様々な策を講じてきましたが、残念ながら現状では十分とは言えない状態にあります。
そのため政府が進めているのは「国土強靭化」です。
現状のインフラがどの程度リスクを孕んでいるのかを徹底的に検証し、防災・減災の対策を講じる取組みです。
国交省の推計によれば、既に老朽化しているインフラを維持・更新するためには今後30年間で約195兆円が必要です。
見方を変えれば、「国土強靭化」に関連する企業にとっては巨大市場が生まれつつあると言えます。
今回はこれら企業の株価動向やその背景について分かりやすくご紹介したいと思います。
目次
1.「国土強靭化」関連銘柄に期待
「国土強靭化」関連銘柄とは、インフラ投資によって恩恵を享受する企業を指します。
1-1.「国土強靭化」関連銘柄とは?
「国土強靭化」とは、国土や経済・暮らしが災害や事故などにより致命的な被害を負わない強さと、速やかに回復するしなやかさを持つこととされています。
自然災害に対して致命的な被害を防ぎ、被害を最小化し、かつ迅速な復旧復興が出来るようなインフラ体制を構築することがに目的です。
しかし日本のインフラは、準備万端とは言えんません。
日本の現在のインフラは多くが戦後の高度成長期に建設されており、そのため老朽化が進んでいます。
地震などの災害が多いことを踏まえると非常に危険な状況にあるのです。
日本建設業協会が毎年作成している「建設ハンドブック」によると、建設後50年以上経過している道路橋は、2020年時点で25%です。
しかし5年後には39%、15年後には63%まで高まる見込みとなっています。
港湾施設も同様です。
2020年時点では建設後50年以上経過しているのが18%、
5年後には28%、15年後には52%まで拡大することが想定されています。
いつ訪れるか分からない自然災害を相手にしている以上、国土強靭化実現に向けた取組みは早期に着手する必要があるでしょう。
そうした際、活躍する企業を「国土強靭化」関連銘柄として、ご紹介していきたいと思います。
1-2.東京五輪の開発が一段落。新たな政策に注目
新しい国立競技場も完成し、東京オリンピックに伴う首都圏再開発需要が一段落したことから、2020年は新たな建設需要を生み出す国土強靭化政策が注目されます。
特に2018年7月の西日本豪雨や、2019年10月の大型台風19号など、
日本では近年大規模水害が相次いでいます。
政府は2019年12月に閣議決定した過去最大規模となる26兆円もの補正予算の中で、
台風被害からの復旧や防災・減災をはじめ、国土強靭化に向けた公共工事に5兆8,000億円の財政出動することを決定しました。
国土強靭化のメインテーマは「水害」に対する防災や減災に関連する銘柄となりますが、「電線地中化」や「産業廃棄物処理」といったテーマも注目されつつあります。
水害対策を中心に国土強靭化関連銘柄に注目しておくようにしましょう。
- 「国土強靭化」関連銘柄とは、国土強靭化の文脈でインフラ投資によって恩恵を享受する企業のことを指す
- 建設関連の業界にとって長期的に巨大な市場が生まれることが注目を集めている
2.「国土強靭化」関連銘柄の推移
過去に上昇した関連銘柄と、その上昇理由を見ていきましょう。
2-1.道路舗装大手!【1881】NIPPO
道路舗装・土木大手の【1881】NIPPOは、国土強靭化関連銘柄を代表する銘柄です。
同社は、2019年秋に日本に直撃した台風15号と台風19号の影響で大きく買われました。
同社の株価は2019年1月初めには2,014円を付けていましたが、その後は横ばい後に下落となり、8月には1,793円の安値を記録。
しかし9月に千葉県を中心に大きな被害をもたらした台風15号、10月に日本中に甚大な被害をもたらした台風19号の影響から大反発。
2020年1月には2,793円まで上昇しています。
2019年9月の台風発生からの約5ヶ月で最大+55%の上昇となりました。
2-2.電線地中化で注目!【5287】イトーヨーギョー
水害対策として注目されているのが「電線地中化」です。電柱や電線を地面の下に埋め込むことによって、台風や洪水被害を減らす効果が期待されています。
電線地中化関連銘柄は、2020年9月の台風15号によって千葉県各地で電線・電柱被害が相次いだことから、マーケットで注目されるテーマ株となりました。
特に、電線地中化を実現する製品「D.D.BOX」「S.D.BOX」を手掛けている【5287】イトーヨーギョーは大きく買われました。
同社の株価は、2019年9月初めには710円を付けていましたが、台風15号と台風19号で電線地中化が注目されたことからストップ高を連発。
台風19号の上陸前日となった10月11日には2,455円まで上昇しました。
短期的に買われ過ぎていたことから台風通過後は暴落したものの、日本中が2つの台風で揺れた1ヶ月で最大+245%の上昇となりました。
- 台風や水害での停電などの時期に大きく買われる
3.「国土強靭化」関連銘柄
銘柄 | 備考 |
【1414】ショーボンドHD | 橋梁や道路などの構造物の補修補強を手掛ける。自治体発注の小規模案件などで豊富な実績を有する。 |
【1926】ライト工業 | 法面保護や地盤改良工事を得意とする土木工事の請負事業者。中期で海外売上高を1割まで拡大目指す。 |
【1801】大成建設 | スーパーゼネコンの1社。市街地再開発など大型案件で強み。国土強靭化に絡む大型プロジェクトで受注可能性あり。 |
【1802】大林組 | スーパーゼネコンの1社。関西地盤の企業ながら首都圏でも実績豊富。国土強靭化に絡む大型プロジェクトで受注可能性あり。 |
【1812】鹿島建設 | スーパーゼネコンの1社。都市部超高層ビルや原子力発電所建設に強み。国土強靭化に絡む大型プロジェクトで受注可能性あり。 |
【1803】清水建設 | ゼネコン大手。民間建築工事に強みを持っており全国的な営業網を構築。国土強靭化に絡む大型プロジェクトで受注可能性あり。 |
【5911】横河ブリッジホールディングス | 鉄骨橋梁の新設工事や更新工事を数多く手掛けている。工場や倉庫などのシステム建築分野にも注力中。 |
【1871】ピーエス三菱 | 三菱マテリアルが33%保有する筆頭株主。PCコンクリート分野で強みを持っており、高速道路や橋梁の更新案件を手掛ける。 |
【1821】三井住友建設 | 2003年三井建設と住友建設が合併。建築はマンション中心、土木ではPCコンクリート橋梁中心に展開しており、老朽化対策工事などを手掛ける。 |
【5912】OSJBホールディングス | 橋梁工事を中心に特殊技術を有する。その他、豪雨対策の地下ポンプ場などの地下構造物でも実績あり。インフラ老朽化(特に橋梁)対策関連銘柄の1つ。 |
4.おすすめ「国土強靭化」関連銘柄
では、最後に注目すべき「国土強靭化」関連銘柄を紹介します。
4-1.【1893】五洋建設
市場 | 東証一部 |
業種 | 建設業 |
単位 | 100株 |
比較される銘柄 | 大林組、不動テトラ、鹿島 |
企業概要 | 海上工事では国内トップクラスの実績を誇る企業で、港湾施設なども数多く手掛けています。 |
港湾施設の老朽化も今後30年間で最大8兆円と試算されており、恩恵を享受する可能性がある。
4-2.【6289】技研製作所
市場 | 東証一部 |
業種 | 機械業 |
単位 | 100株 |
比較される銘柄 | 酒井重、日立建機、クボタ |
企業概要 | 護岸工事や港湾施設向けの工事に独自のインプラント工法を提供している企業です。 |
津波対策などの護岸工事で独自の工法が採用される可能性がある。
4-3.【1883】前田道路
市場 | 東証一部 |
業種 | 機械業 |
単位 | 100株 |
比較される銘柄 | ライト、NIPPO、日道路 |
企業概要 |
道路舗装大手。前田建設との親子上場解消の動向にも注目が集まる。 |
道路舗装大手の前田道路は、国土強靭化関連銘柄の代表的な銘柄です。
2020年1月に親会社の前田建設が親子上場解消のためのTOBを発表したものの、前田道路が反発したことが話題になっています。
ただ、前田道路が買収されれば、道路舗装業界の再編に繋がると期待されていることから、株価は上昇基調にあります。
国土強靭化関連銘柄の動向と合わせて、前田道路のTOBの行方は要チェックしておきましょう。
- 老朽化が進んでいる分野に強みを持つ企業は注目される可能性がある
- 老朽化対策向けに独自技術を有している企業は注目される可能性がある
5.まとめ
「災害大国」の日本。
近年、台風や豪雨での様々な自然災害が跡を絶ちません。
記憶に新しい東日本大震災では、当初の想定をはるかに超えるレベルの被害でした。
そして、現状のインフラは老朽化が進むなど十分な対策が講じられているとは言えません。
日常生活を安心して暮らすためにも、「国土強靭化」は避けては通れない道です。
「国土強靭化」関連銘柄は、強くしなやかな日本を作り出す重要な役割を果たす一方、今後30年間にわたって生まれる約195兆円という巨大市場が目の前に広がっているのです。
「国土強靭化」関連銘柄に投資することで、将来大きなリターンを獲得することが出来るかも知れませんので、ぜひとも銘柄をチェックしてみてください。
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